67.捕まりました
何か硬いものが体に当たった気がし、俺は目覚めた。
視界に、石で作られた壁と、太い鉄格子が目に入る。
俺は立ち上がり、この不気味な空間から逃れようとする。
その瞬間、俺の体が大きく後ろに引っ張られ、頭を後ろの壁にぶつけた。
「い゙づっ!」
俺は情けない声を出し、そのままへなへなと座り込む。
後ろを振り返ると、鎖が一本壁から伸びていた。
その先は、俺の手にかけられた枷と繋がっている。
どうやら、これに体を引っ張られたようだ。
リーデマンの仕業だろう。
壁にところどころひびが入っていることからして、ここは長らく使われていないようだ。
ということは、頻繁に犯罪者が収容される刑務所や留置所ではない。
おそらく、リーデマン邸の地下に作られた地下牢といったところか。
家の地下に牢屋を作るなんて普通は考えられない。やはりリーデマンは何か良からぬことを企んでいる。
さて、しばらく自由は奪われたままになりそうだ。
ここにも魔法封じが張られているようで、さっきから魔法を放とうとしているのだが、うまくいかない。
食事や水はさすがにくれるだろうし、数日摂らなかったところで、死にはしない。
大人しくしているのが得策だろう。
「ん……。どこ?」
隣で声がした。
見ると、玖珠田も同じ仕打ちを受けていた。
玖珠田は拘束に気づかず、立ちあがろうとする。
「ぎゃっ、あ゙あ゙っ!」
玖珠田は、俺と同じように壁に頭をぶつけた。
「痛ぁ……。神埼、助けてぇ〜……」
玖珠田は涙をにじませながら、情けない声を上げる。
「無理だな。魔法が封じられちゃ、どうしようもない」
「って神埼!? いたの!?」
さっきからいるよ。いると思わなかったのになぜ助けを求めた?
「ま、まあいいわ。それで、何とかならないの?」
「だから無理だ、というか例え脱出したとて、あれだけの人数相手に魔法を使わず勝てる自信があるのか?」
「な、無いけどさぁ……」
それっきり、玖珠田は黙ったままだった。
ーーーーーーーーーーー
アルトにて。
しーちゃんが貴族との決闘に出かけて、まる2日たった。
おととい中には帰ってくるって言ってたのに。
1日なら、引き止められて止まったんだろうなーとなるけど、2日になると心配だ。
そのうえ、玖珠田っちもいなくなった。
さすがに不安になってきたので、ギルドになにか情報がとどいていないか聞きにいった。
すると……。
「な、なにこれ?」
掲示板には、
『カンザキ・シグレは、私を殺そうと画策したため、臨時に収監しています。 エルンスト・フォン・リーデマン侯爵』
と書かれていた。
「何だこれ? 殺そうと? んなわけ……」
振り返ると、井川くんが紙をのぞいておこっていた。
「だよねえ。なんか怪しいねぇ……」
それから、何をすることもできず、さびしい日々を過ごした。
ついに、しーちゃんが出かけて4日たった。
さすがにおかしいと、みんなを説得して回ったけど……。
「意気投合して、何回も決闘してんじゃねえの。気にすんなよ」
「えぇ……。たしかに心配だけど、そのうち帰ってくると思うよ……」
ほとんどの人は、まったく取り合ってくれなかった。
でも、井川くんと委員長は賛成してくれた。
「やっぱり、このリーデマンって奴が怪しい。こいつの家に忍び込んで真相を突き止めようぜ」
「その気持ちも分かるけど、相手は貴族だからねえ。さすがに難しいんじゃないかな」
私、井川くん、委員長の3人で、真実を突き止めるための相談が始まった。
「盗賊スキルがあれば、気づかれずに忍び込めたりするかもだけど……あっ」
2人は、同時にこっちを向いた。
「無理ですよ。用事もないのに王都までだなんて」
「そこを何とか! 私たちの仲間が危ないんです!」
「そうは言われましても……」
ギルドの店員さんに、王都まで送ってくださいと頼みこんだ。
数十分くらい頼みつづけたら、ようやく許可してもらえた。
「……それでは、行きますよ……はあっ!」
目を開けると、そこは王都だった。
「よし、日没を待って、リーデマンの屋敷に忍び込もう。三城は隠遁使えるだろ?」
「うん」
日が暮れるまでは、リーデマンの家を探した。
町の人たちに聞いても、なかなか教えてくれないので困った。
「あそこだ。だが気をつけるんだぞ。あいつには、よからぬ噂があるからな……」
教えてくれた人も、そう言っていた。
やっぱり、リーデマンが犯人だ。私はそう思った。
「こっちだ」
2人といっしょに影にもぐって、リーデマンの家にしのび込む。
広い庭をぐんぐん進んで、家の門にたどり着いた。
「待って、細い糸が張ってある。罠だ」
進もうとする私を、委員長が呼び止める。
「おい、敵感知発動させておけよ。また迷宮ん時みたいになるぞ」
「う、あ、あぁぁ……」
かつてのトラウマを思い出し、体が震えだす。
「でっけえな。さすがは貴族だ」
ダイニングはすごく広くて、椅子が数十個もある。
でも、しーちゃんたちはいなかった。
「こっちを探そうぜ……っ!」
井川くんが口を押さえる。
「人の声? 誰もいませんぞ」
「いえ、確かに人の声が……」
白い服を着た2人の男の人が、ダイニングに入ってくる。
そして、天井に吊り下げられたシャンデリアの電気をつけた。
「ほら、誰もいな……」
影がなくなって、床に押し上げられた私たちと、男の人たちとの目があった。




