61.戦いの行く末は
「それで、何の用だね」
ダンクはこちらを一瞥すると、俺に座るように促す。俺は従った。
「私たちアルト防衛隊と、あなた方王都防衛軍との連携を行いたく、やって参りました」
「なるほど。さては、敵の本部隊に攻撃を加えたのは君たちか。作戦になかったので驚いたが、結果的にいい方向に働いたようで、感謝する」
「それには及びません。それで、王都防衛軍のこれからの作戦を、お教えいただきたく」
ダンクの表情が険しくなる。
もっともだ。ぽっと出の冒険者に、そうやすやすと機密情報を教えられるわけがない。
「その前に、君たちアルト防衛隊について、教えてくれないか。規模によっては、こちらが攻勢に出られるかも知れん」
「今王都に来ているのは、半分の205名ですね。職業比率は標準的でしょう」
そう言うと、ダンクは思案した後、机の上のベルを鳴らす。
数人が出ていき、しばらくしてまた数人が入ってきた。
「ただいまより、魔王軍への反撃作戦を開始する。騎兵団第一隊は北門、第二隊は北東門、第三隊は北西門から進軍。魔導隊は、王城からの攻撃を継続。臨時雇用の傭兵は返してやれ」
「「はっ」」
やってきた人々は、また忙しなく帰っていく。
ダンクは、皆が出て行ったのを確認すると、俺の目を見据える。
「君たちには、敵の隊列に突っ込んでもらう。魔法を味方に当てないように気をつけたまえ」
「これは、随分と期待されていますね。せいぜい、アルト防衛隊の名に恥じぬよう頑張りますよ」
俺は後ろ手にドアを閉め、足早に王城を出て、高地を目指す。
すでに指令が行き渡ったらしく、あちこちから馬の駆ける音やいななきが聞こえてくる。
「反撃作戦を行う。剣士、敵陣に突撃! 魔術師は攻撃用意!」
俺の一声に、冒険者たちは一斉に動き始める。
王城からも、騎兵団が飛び出してくるのが見える。
たちまち戦線は瓦解し、魔王軍は一気に押し返されていく。
「魔法攻撃始め! 味方のいない後方を狙え!」
平原に爆撃が降り注ぐ。
この戦いは、正直言って余裕だった。
高地に陣取っているのと、敵軍に王都という攻撃対象がありこちらへの意識が薄いこと、強い幹部がいないことなど、さまざまな要素が積み重なってのことだろう。
まもなく、魔王軍は進軍を諦め、撤退を始めた。
(王軍の指示に従って行動すること!)
俺は脳内通信で指示を出す。まもなく、追撃の指示が出たようで、皆は進み始めた。
「俺たちも攻撃した方がいいか?」
近くの魔術師が声をかけてくる。
「いや、遠すぎて狙いがつかない。返って味方を傷つけることになりかねんし、我々は待機だ」
すでに日はすっかり沈み、真っ暗になっている。
さっきは近かったから狙いがつけやすかったと言うものの、あんなに遠いと、当てられる自信がない。
王城の魔導隊も同じ判断をしたようで、まもなく戦場には静寂が訪れた。
(敵の殲滅に成功したぞ!)
しばらくして、一報が入った。
(よくやった! 帰ってきていいぞ)
その旨を皆に伝えると、歓声が上がった。
「勝ったぞ! 万歳!」
「俺たちのおかげだな! 金がたんまり儲かるぞ!」
「よし。剣士たちが帰ってきたら、アルトに戻るとしよう」
まもなく、俺たちはアルトに帰還した。
そういえば、転移魔法について説明していなかったな。
帰るときは、地面にある模様の魔法陣を書いて、一斉に呪文を唱える。
便利な魔法だ。
後日、俺たちは報酬を受け取った。
上の機嫌が良かったようで、アルトで待機していた者にも報酬が支払われた。
待機か向かうかは適当に決めたから、不満が湧かないかと心配だったのだが、大丈夫そうだ。
それからしばらくは、王都が戦勝ムードでお祭り騒ぎだったこともあり、アルトも非常に景気が良かった。
冬は野生のモンスターも大人しいので、懐の暖かい冒険者たちに働く理由はない。
もっとも、副隊長は忙しい。
まあ、王都からの報酬の受領書とか、暇になったギルドの職員の愚痴を聞くとかしか仕事はないが。
王都での戦闘から2週間ほど後。
賑やかさも薄れてきた頃合いで、王都から一葉のはがきが届いた。
宛先が俺らしい。
不審に思いながら開けると、そこに書かれていたのは。
親愛なるアルト防衛隊副隊長、カンザキ・シグレくん。
私は今回の戦いで、君の実力を認めた。
もし都合が良ければ、明日にでも、わが屋敷で君と決闘をしたい。
いい返事を期待している。
……なんじゃこりゃ?




