60.作戦は順調ですね
魔法攻撃は辺り一面に降り注ぎ、魔王軍はその列を乱す。
「さらに攻撃を続けろ! 魔力の確認を忘れるな!」
俺は2回目の『火炎旋風』を打つ。
魔王軍はこちらに気付き、一部がこちらに突撃してくる。
「剣士! こちらに来た部隊を殲滅しろ! 修道士は剣士たちに支援を!」
剣士たちは一斉に飛び出す。修道士たちは杖から支援魔法を剣士にかけていく。
部隊はあっという間に全滅した。
「おい、もっと来たぞ!」
叫び声のする方を見ると、さらに巨大な部隊がこちらに進んでくる。
「魔法はそっちに切り替え、剣士は一旦後退!」
魔法の爆撃音が少しずつ近づいてくる。
「数が減ったな。魔法攻撃を本部隊に戻し、剣士は突撃!」
またもや敵部隊の殲滅に成功した。
しかし、その大成功は長くは続かなかった。
王都の北側から侵攻している、敵の本部隊が、向きを変えこちらに進軍してきた。
もはや脅威であると判断されたのだろう。
しかしこの高地だけは守り抜かなければならない。ここが落ちれば優勢は一気に崩れる。
「敵を通すな、魔法攻撃を続けろ! 剣士は撤退、衛士を先頭に!」
陣形が変わっていく。
魔法攻撃は降り注ぐ。
しかし、敵は歩みを止めない。
敵の魔法も数を増し、あちこちから悲鳴や怒号が聞こえる。
「魔法結界を張れ! 敵は不死者が多い、光属性をつけろ!」
魔法結界というのは、内外からの魔法を弾き返す結界だ。
直ちに修道士たちが魔法を発動し、高地はガラスのような見た目の結界に包まれた。
敵の魔法は結界に弾き返され、こちらに飛んでこない。
結界に触れた敵も、次々と浄化され消えていく。
しかし、敵も馬鹿ではない。
結界が張られていることに気付き、後退した。
結界が崩れるのを待つつもりだろう。
「中からの攻撃を通せるようにすることは可能か?」
俺の質問に、修道士たちが結界をいじくり始める。
やがて、歓声が上がった。どうやら成功したようだ。
「魔法攻撃……初め!」
一方的な攻撃が続く。
敵は勝ち目がないと見たか撤退し、王都の攻撃に戻った。
「王城の防衛をしている王都防衛軍との連絡が取りたいな……。誰か王城に向かってくれるか?」
俺が問うと、冒険者たちは顔を見合わせた。
決死隊みたいなもんだ。自分がと出るわけがない。
「そうか。なら俺が行く。山口、『通信』を発動させてくれ」
群衆はどよめいた。副隊長が自分から決死の役割を担うなど、思ってもいなかっただろう。
陽が沈んできた。影が平原を覆う。
俺は陰に潜り、王都へ突き進む。
西の城門は固く閉ざされていたが、俺には関係ない。
ついに王城の入り口に辿り着いた。
結界が張られているのか、この辺りは静かで、瓦礫なども少ない。
俺は影から出て、そこら辺の衛兵に話しかける。
「アルトから援軍に来た。ここを通してくれ」
「何を言っている。城壁から誰か来たという情報は入っていない。ここは通さん」
陰に潜んでいたのが裏目に出たか。
「攻撃を避けるため、陰に潜っていたんだ。この通り」
俺は地面に潜ってみせた。
「なるほど。しかしまだ信用はできぬ。名前と肩書き、用事を言え」
「アルト防衛隊副隊長、神埼時雨だ。王城の守備隊と連携をしたい」
「カンザキ? アルト防衛隊の副隊長はハリスじゃなかったか?」
「前変わったんだよ。疑わしければ、手紙を送ったはずだから見てこい」
10分後。
「失礼しました。どうぞお入りください」
「いちおう、これが身分証だ。ありがとう」
この国で最も警備が厳しい王城だ。疑われるのは致し方ない。
王城の庭を進み、建物の入り口に辿り着く。
そこでも身分証を見せ、王城に入る。
中では忙しなく人が動き回っている。
皆軍服のような格好をしていることからして、彼らは王都防衛軍だろう。
その中の1人に、長官の居場所を聞くと、快く教えてくれた。
その部屋に辿り着くと、中からは忙しない話し声が聞こえてくる。
ドアを叩くと、中から訝しげな表情の男が顔を出す。
身分証を見せ、中に入ると、目の前の椅子に、顎ひげを蓄えた壮年の男が座っている。
「君がアルト防衛隊副隊長、カンザキくんか。話は聞いている。私は王都防衛隊隊長、レンベルト・ダンクだ」




