6.森を探索しました。そして……
異世界生活2日目。
俺らは、3チームに分かれ、森の中を探索することにした。
出席番号順に、「神様の言うとおり」方式で割り振っていく。
荒川、榎田、玖珠田、芹沢誠、寺田楓、野口、朴葉、若山の8人は、川向こうの森。
井川、俺、笹川、立川、泊、芳賀直樹、三城の7人は、川のこちら側の森。
石川、城戸、清水、千曲、平城山、日比野、山口の7人は、拠点の防衛。
山口の『通信』を常時作動させ、危険を確認したら、すぐに全員に知らせる。
正午に、拠点に全員集合することにし、各班が出発した。
「……何もねえじゃねえか」
泊が悪態をつく。7時ごろに出発して以降、2時間ほど収穫のないままだ。
「まあ、何もないっていうのも大事な情報だよ」
立川がたしなめる。
「ってもよお、さすがにやってらんねえよ。ただ森の中を歩かされて、はい何もなかったですじゃ、拍子抜けだぜ」
まあ否定はしないが、何か見つけたら危なくないか?
「おい、何だあれ、洞窟?みたいな……」
まじかよ。この洞窟、禍々しい雰囲気がめちゃくちゃするんだが。
「ほんとだ、前には丁度いい大きさの岩もあるし、少し休憩していこうか」
こうして、俺ら7人は、危険な香りがぷんぷんする洞窟の前で、休憩することになった。
「ふう、異世界に来て、ずっと忙しかったけど、やっと一息つけた気がするなあ」
三城が、木を削って作った水筒の水を飲みながら呟いた。
確かに、ここまで落ち着けたのは初めてかもしれない。
昨日は朝から晩まで木をへし折り、夜はケルベロスと徹夜で2回も戦闘だったからな。
俺も、水筒の蓋を開け、水を飲もうとした。
その瞬間、後ろから強力な殺気を感じた。
俺は無意識に身をひるがえし、岩から転がるようにして離れた。
殺気の主は、今まさに三城を飲み込もうとする、大きなカエルであった。
「危ないっ!!」
カエルが三城をおやつにする寸前、井川が持っていた槍をカエルの口に挟む。
槍がつっかえ棒のようになり、カエルは一瞬戸惑った。
その隙に、俺らは茂みへと隠れる。
(大きなカエルに襲われた!助けてくれ!)
井川が通信で助けを求める。
しかし、救援がすぐに来ることは期待できない。
俺ら7人だけで、この巨大なカエルを倒さなくては。
しかし、どうする?
このカエルの習性も分からないし、どのような攻撃が有効かも分からない。
手当たり次第に攻撃する余裕はない。
逃げるにも、カエルはひとっ飛びで追いつくだろう。
「目を攻撃しよう、出っぱった目がきっと弱点だ」
笹川が言う。確かに目は弱いだろう。
泊は反論した。
「でもよ、目に槍ぶっさす前に、俺らが喰われちまうぜ」
「なら、槍を投げればいいじゃないか」
「外したらどうすんだ。こっちの場所を知らせるだけだぜ」
笹川と泊が言い争う。もうちょっと小声でお願いしたいのだが……。
さすがに引いたのか、立川と三城が少しずつ奥に下がっていく。
パキッ
三城が枝を踏んづけた。
「あ、……逃げろぉー!!」
三城はさっさかと逃げ出した。のだが、木々と背の高い草に阻まれて進めていない。
カエルがこちらに気づいた。大きな口をあんぐりと開け、こちらに迫ってくる。
俺は賭けに出ることにした。
カエルが一番前にいる泊と笹川を飲み込む瞬間、俺は地面を蹴って前方へ飛び上がる。
「うおおおおおお!!」
大きく振りかぶり、手に持った槍を、カエルの目ん玉に突き刺した。
カエルはもんどりうって倒れる。
その上に着地していた俺は、衝撃で吹き飛ばされる。
まずい。カエルが起きれば死ぬ。
後ろを振り返ると、カエルは──。
ピクリとも動かない。
ステータスを開くと、倒したモンスター欄に、「ポイズンフロッグ」と書かれている。
倒した……。俺は安堵した。
ん? ポイズン? 毒?
あっ……。
カエルの口から、泡を吹いて気絶している、泊と笹川の上半身がぬるぬると出てきた。
こりゃまいったな……。
結局、泊と笹川は、今回特に何もしなかった井川と芳賀がおぶって、帰ることにした。
途中、井川の連絡を聞いて慌ててやってきた拠点防衛組と出会った。
その場で山口が、(退治完了)と連絡を入れ、クラス全員が、見事拠点で合流を果たした。
毒は大したものではなかったらしく、まもなく2人は回復した。
その後、今回大いにやらかした三城は、日比野と玖珠田に、2時間ほど絞られていた。