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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第五章 王都
59/71

59.王都に行きました

「ごめんください。もしもーし!?」

 扉を叩く音と、上ずった男の声に目を覚ますと、俺は部屋の扉を開ける。

 とたん、焦った様子の、鎧姿の男が飛び込んできた。

「何の用です? まだ外も暗いし、こっちだって忙しいんですよ」

「そんなことを言っている場合ではないのです。とにかく来てください、副隊長殿」


 男に促され、ギルドの隊長室に駆け込むと、そこには深刻な顔をしたハンドンと、そわそわしている見知らぬ者が5人ほど。

「お連れして参りました」

 男がハンドンに報告すると、ハンドンはこちらを見据える。

「急に起こしてしまってすまない。だが、どうやら大事らしい」


 話を聞くところによると、この国の王都が、今魔王軍の襲撃に遭っているそうだ。

 過去に類を見ないような大軍勢で、人間の国で最強とまで言われる王都防衛軍も、劣勢を強いられている。

 状況を打破するため、急遽政府が各都市の防衛隊に使者を送り、協力を要請しているとのこと。

「なるほど。しかし、王都の危機とあれば、向かうべきでは?」

「ああ。魔王軍の目的が、王都の陥落だけならばな」

 ハンドンの言うとおり、王都に戦力を集め、その他の地域を攻め落とすことが目的の可能性もある。

 ならば、迂闊に冒険者を向かわせるのは避けたい。

 転移魔法も無限ではないのだ。


「お気持ちはよく分かります。しかし、このままでは、陥落は免れても、王都は再建不可能なほどに甚大な被害を受けるでしょう。もしかしたら、支援に向かわなかったこの防衛隊に、何らかの処分が下されるかもしれません」

 ハンドンは俯き、唸る。

「でしたら、私が王都への援軍を率い、隊長はここを防衛するというのは?」

「いいのか? それができるならば、一番だ」

 ハンドンは顔を上げ、顔を綻ばせる。


「でしたら、早速作戦を考えましょう。これが王都付近の地図です」

 男が、自らの鞄から地図を出し、机に広げる。

 地図は、等高線や森林が描かれており、なかなか詳細である。

「魔王軍は、現在王都の北と北東から侵攻しています。また東のエスランド王国と結ばれた道路も、敵軍の手に落ちたようです」

 男は、黒色の立方体を地図のあちこちに置き、さらに矢印を描いた。

「我が軍は現在、南西方面に市民や王族貴族を避難させつつ、王都中央に位置する王城にこもり、遠距離の攻撃を行っています」

 地図に描かれた城に、白い立方体が置かれる。


「敵の構成は?」

「さまざまです。不死者(アンデッド)から魔獣、亜人、魔人騎士団も混ざっているとか。ただ幹部は確認されなかったそうです」

「なるほど。我々は王城内に転移し、そこから魔法で攻撃するのか?」

「いえ、できれば侵攻してくる魔王軍を直接攻撃してほしいというのが、指揮官のご意向だそうで」

「分かった。この高地は占領されたのか?」

 俺は、王都の北西に描かれた高台を指差す。

「いえ、おそらくまだ。敵の目的は王都の陥落ですから」



「この高台に転移すればよいのですね。しかしこの大人数となると、魔力が持つか心配ですね」

 転移の術者が呟く。

「ちょっと、転移中に魔力が切れたりしたらことですし、回数を分けてやった方がいいんじゃないですか?」

 時空の狭間に閉じ込められるとかないだろうな?

「そうですね。ではまず20人」

 術者は魔法を唱える。


 目を開けるより先に、戦場の音が聞こえてきた。

 魔法による爆発音。怒号と掛け声。唸り声。

 目を開けると、雪の薄く積もる巨大な王都が目いっぱいに映る。

 しかし、その端々から煙や火が上がり、2重になっている城壁も大きく破損している。

「敵軍に気づかれている様子はないな。全員が転移し終わるまで待とう」

 しばらくして、総勢200人の冒険者が、この地に集結する。

 魔術師(ウィザード)たちは杖を構え、剣士(ソードマン)衛士(プロテクター)は最前で剣を構え、その他もろもろもそれぞれ攻撃の備えをする。


「初手が全てを決する。強くなくていい、広範囲に一気に攻撃を注ぎ、弱ったところで剣士たちが突撃する」

 俺も、『火炎旋風』の魔力の形を色々と調整する。

「攻撃……初め!!」

 俺の合図と共に、魔法が一気に放たれる。

 戦闘の開始を告げる花火だ。

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