58.ドラゴンと戦いました
洞窟に入ると、そこは青白くぼんやりと明るかった。
明かりがあるわけでもないのに、不思議なことだ。
「危ない!」
井川が叫びながら飛びのく。
見ると、蒼龍の大きな口がこちらに突き進んでくる。
俺は影に隠れようとする。が、どうも発動できない。
やむなく、地面に伏せて難を逃れる。
蒼龍を観察すると、その長い尻尾の先に青白い炎がゆらめいている。
どうやら、それが意図せず影を無くしているようだ。
もちろん位置によっては影ができるが、蒼龍が動けば出口が消え、影に閉じ込められかねない。
隠遁は封印しなければならないようだ。
俺たちは、突っ込んでくる蒼龍の口を避けながら、切りつけたり魔法を放ったりし、少しずつ体力を削っていく。
すると、尻尾の先の炎がひときわ大きくなる。
炎は蒼龍を包み、やがて再び小さくなる。
「あっ、体力が戻った! あの炎には回復効果もあるみたい」
日比野が言う。これは厄介だ。
「炎を水で消せないか?」
俺の質問に、水属性の荒川が水をかけてみる。
一瞬火が消えるが、すぐに燃え上がった。
「無理だよな。一撃で倒せればいいんだが……」
「『火炎旋風』は?」
「洞窟でやったら吹っ飛ぶぞ。前それで大変なことになったから」
迷宮で炎を浴び、気絶した記憶がよぎる。
決定的な一撃が与えられないまま、俺たちは攻撃を繰り返した。
蒼龍はその度に回復する。
その時、しびれを切らしたらしい蒼龍が、ひときわ大きい咆哮を上げる。
その後、蒼龍は背中の大きい羽を羽ばたかせ、洞窟の出口を目指して進む。
洞窟を出る気か? しかし外に出て何をすると言うのだ?
とにかく、これは好機だ。外ならば心置きなく『火炎旋風』が打てる。
「攻撃中止! 外に出してから倒す!」
皆は攻撃をやめ、蒼龍の後ろをついていく。
ついに、蒼龍は洞窟を出る。
その途端、一気に速度を上げ、空へと上がっていく。
「あっ、逃げる!」
「『火炎旋風』……くそっ、間に合わん!」
これは失態だ。どうすれば……。
その時、蒼龍は動きを突然止めた。
羽ばたけなくなったため、地面へと墜落していく。
やがて、蒼龍は森に突っ込んだ。
「な、何だ!?」
「襲撃だ! ……いや、ドラゴンだ!!」
慌てたゴブリンやらコボルトやらが、森から出てくる。
「今だ……『火炎旋風』!」
炎は、あたりの森ごと焼き尽くす。
結果的に、魔王軍にも被害を与えることができたようだ。
しかし、一体なぜ……?
俺たちは思案する。まさか、魔王軍のルビアとやらが協力したわけでもあるまいし……。
「やあ、久しぶりだね」
明るい声に振り返ると、そこには見知らぬ少女が立っていた。
「……誰ですか?」
「ひっ、ひどい! 城戸茜だよぉ!」
城戸と名乗ったこいつは、涙目で飛びかかってくる。
「えっ、あかねじゃん。久しぶり」
玖珠田や三城は、城戸を俺から引き剥がすと、じゃれ始める。
ああ、そういえばいたなそんなの。
確か、めちゃくちゃ強い麻痺魔法が使えるんだっけ。
「ということは、お前があれを止めたと」
「そうだよ。いやあ、採集クエストしてたら、いきなり山からドラゴンが出てきたんでびっくりしたよ」
「すんません」
倒せたのはほぼこいつのおかげなので、報酬は半分渡した。
宿に戻り、部屋に帰ろうとすると、城戸が呼び止めてきた。
「ねえねえ、私をもう一度パーティーに戻してくれない?」
このところ多いなぁ……。
話を聞くと、城戸もとあるパーティーにいたのだが、反りが合わずに脱退してきたそうだ。
その後、ソロで冒険者をしていたのだが、ヘーレ迷宮に潜った時、ゴブリンの群れにボコされ、さすがに1人じゃ無理だとなったらしい。
「なるほど、それで帰ってきたと」
「うん。いいでしょ?」
「まあいいけどな……。また人数が増えるなぁ」
メンバーの同意もとり、城戸は新たなメンバーとなった。




