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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第五章 王都
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57.もう雪かきはこりごりです

「……ここはどこだ?」

 目覚めると、見知らぬ建物の一室で、俺はベッドに寝かされていた。

「何が起こって……っ」

 体を起こそうとすると、全身に鋭い痛みが走る。

 見れば、俺の体には包帯が巻かれ、血が滲んでいた。

 隣にもベッドがあり、そこには同じくひどい怪我をした荒川が横たわっていた。


「おお、お目覚めになられましたか。すぐに医者を呼んで参ります」

 足元の方にいたらしい、白衣を着た男が、ドアから出ていった。

 俺は非常に混乱している。

 ここが病院らしいことは分かった。

 しかし、なぜ俺はこんな酷い怪我をしているのだ……?

 考えていると、白衣の男に連れられ、医者と思わしき若い女が入ってきた。

「ってお前……玖珠田じゃねえか」


「玖珠田だよ。何か悪い?」

「いや別に。あぁ、お前修道士(プリースト)だったな」

「そうだよ。んで、魔力はどんな感じ?」

 玖珠田は面倒くさそうに聞く。

「どれどれ……全回復してるな」

「よし、なら治せるかな」

「ん? 魔力と何の関係があるんだ?」

「回復魔法ってのは、魔力を生命力に変えて傷を治したりする魔法。私は魔力があんまり高くないから、あんたの魔力を使わないと治せないわけよ。起きないと魔力がどんだけあるかわからないからさ、もし足りないとそのままおだぶつだから」

 説明しながら、玖珠田は手を俺の体のあちこちにかざす。


 やがて、痛みはとれ、包帯を剥がすと、そこには綺麗な皮膚があった。

「ふう、助かった。……ところで一つ聞いていいか?」

「何? 私は忙しいんだけど」

「何で俺はこんな酷い怪我をしてるんだ? さっきまで雪かきしてたはずだが」

 そう聞くと、玖珠田は呆れたような顔をして説明し出す。


 どうやら、俺は『火炎旋風』を放った後、魔力を全部使い切り、そのまま気絶したらしい。

 気絶すると、体から力が抜け、荒川から滑り落ちかけた。

 咄嗟に俺の腕を掴んだ荒川が、その拍子に空中歩行を解除してしまった。

 結果、20mくらいの高さから転落したようだ。


「ん……ここは?」

 ちょうど荒川の意識が戻ったらしい。

「神埼、荒川さん魔力がまだ足りないから、ちょっとちょうだい」

 玖珠田が言うと、なぜかそこにいた朴葉が、同意も取らず魔力を吸っていく。

「荒川さんが怪我したのはあんたのせいなんだから、責任取りなさいよ」

 その後、俺は魔力を根こそぎ吸われ、意識が戻るのに丸一日かかった。



「……ひどい目にあった」

「はあ、もう空は嫌……」

 今回の一件は、俺と荒川に高所恐怖症という新しいスキルを与えた。

 しかし、タイミングの悪いことに。

「お、神埼回復したんか。ちょっとこれ見ろよ」

 そう嬉々として井川が見せてくるクエストは。

『ヴルカン火山の麓の洞窟に住み着いた蒼龍の討伐。報酬200000カラン』


「「……」」

 俺と荒川は必死に首を横に振る。

 が、井川はすでに他のメンバーの同意を取り付けていたようで。

 すでに支度をしたメンバーが、こちらに目を輝かせながら走ってきた。

「ドラゴンだなんて、異世界の代名詞、参加しない手はない!」

 と若山。

「ちょっと、2人は回復したばかりなんだから、気遣ってあげなよ」

 と言いつつも、こちらに期待の目線をちらちらと送る日比野。


 こうして、俺は早くもトラウマを克服しなければならなくなったようだ。

 何せ、ドラゴンは飛ぶ。

 場合によっては、空を飛び回るドラゴンの背中に乗る必要もある。

 蒼龍はドラゴンの中でも弱いとはいえ、恐ろしい。

 ところで、ヴルカン火山は、以前占領された森のすぐ横にある山である。

 したがって、ドラゴンと戦っている間に魔王軍と戦闘に突入なんてことも考えられる。

 けっこうリスクが高いのだ。


 目を開けると、目の前には岩肌の荒々しい山がそびえていた。

 見た目は、雪が溶けて小さくなった富士山といった感じだ。

 振り返ると、樹海のような深い森が広がっている。

 あれが占領された森だろう。

 素晴らしい大自然に感動していると、突然内臓を揺らす轟音が響く。

 ドラゴンの咆哮だ。

「うわぁ、これは強敵の予感がするね」

 井川はどこか楽しげに杖を振り回している。

 俺たちは、ドラゴンの首を落とすべく、巨大な霊峰へと歩を進める。

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