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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第五章 王都
56/71

56.アルトの冬は厳しいです

 1週間後。

 時は12月、厳しい冬の始まりだ。

 モンスターの多くは冬眠し、冒険者の財布の中身も寒くなる。

 しかし、今年は一味違うらしい。

 今年は記録的な寒波がこの辺りを襲い、豪雪となる見込みだ。

 実際、まだ12月の頭だというのに、もう道路にはうっすら雪が積もっている。

「冒険者の皆さんは、ギルドに集合してください!」

 スピーカーが呼びかける。


「今日の夜から明日の朝にかけて、大雪が降る見込みです。明日の朝から、皆さんには雪かきをしていただきたいと思います」

「いったいどれくらい積もるんだ?」

「町の占い師によりますと、2階から飛び降りても平気なくらいの雪が降るそうです」

 めちゃくちゃ降るじゃん。

「そのままだと町の皆さんが苦労するので、手分けして雪かきをして欲しいのです」

 なるほど。


 そして朝。

「おいおい、占い師なんてあてにならねえぞ」

 2階の俺の部屋の窓が、真っ暗になっていた。

 もちろん、俺が早く目覚めたから暗いわけではない。

 最上階の2階まで積もったのだ。

 ロビーに降りると、出られなくなった宿泊客たちが身を寄せている。

「はい、集合」

 俺はパーティーメンバーを招集し、宿の周りの雪かきを命じた。


 各々の部屋の窓から掘り進め、屋根の上で合流する手筈になっている。

 俺は窓を開けて……。

 開けて……。

「……この窓、外開きじゃねえか」

 閉じ込められました。


「この宿に中開きか引き戸はないのか!?」

「裏口は中開きですけど、1階だからどうしようも……」

「なんだってぇ!? しょうがない、この際火炎旋風で天井を焼き払い──」

「そ、それはやめてください!?」

 しかしどうしたものか。

「……より多くの……りました。……ん、救助……まで……待ち……」

 途切れ途切れの放送が聞こえる。


「とにかく、まずは雪を溶かすところから始めるか。湯を沸かしてください」

 受付に頼んで、大量の湯たんぽを手に入れると、それを窓に押し当てる。

 なかなか雪が溶ける気配はない。

 俺はしびれを切らし、『不知火』を窓にぶつける。

 ヒビが入り、鋭い音とともに、窓ガラスに小さな穴が空いた。

「ちょっとお客さん、窓ガラスを壊すのは……いや、非常事態だし、仕方ありませんね。そのまま続けて」

 支配人の許可ももらい、俺はそのままガラスを砕く。

 ついに、人が通れるほどの穴が空いた。


「じゃあ、俺はこのまま雪を溶かしていきますんで、お客さんたちを呼んでおいてください。火属性の魔術師は、ついてきてください」

 俺が雪を『不知火』で溶かしながら進むと、後から何人かが、横の壁に穴を開けながらついてくる。

 ついに、白い天井に光が差し込む。

 頭上の雪をかき分け、頭を出すと、そこにはとんでもない光景が広がっていた。

 町全体が雪に覆われ、見渡す限り白しか目に入らない。

 アルトで1番高い建築物である4階建てのギルドも、雪像と化していた。

 俺は呆然としながら座り込む。穴から冒険者たちが這い出してきて、言葉を失っている。

 周りを見ると、同じようにやったのか、やっとこさと雪から出てくる冒険者がちらほら見える。


「カンザキさん。あなた確かカエン…なんちゃらとかいう魔法使えましたよね。あれで雪を全部溶かせないんですか?」

「やれるだけやってみましょうかね。しかし、雪の上に立ってちゃ打てないんだよなぁ……」

 俺と支配人は腕を組んで唸る。ここで『火炎旋風』なんて打とうものなら、地面に落ちて骨折する。

「あの、私、空飛べるんですけど……。」

 後ろから、穴から出てきた荒川がおずおずと手を挙げる。

 そういやそうだったな。異世界に来た時以来、使う機会なんてなかったからすっかり忘れていた。

「じゃあ、あなたがカンザキさんを連れて上まで上がって、そこで魔法を放ってもらえれば……」

「できますね。周りの人に、建物に戻るよう伝えてください」


「た、高い……」

 俺は体中をピクピクさせ、暗闇に落ちそうな魂を必死で脳に押しとどめる。

 荒川に負ぶってもらっているとはいえ、さすがに怖い。

「神埼さんって、高所恐怖症だったんですね」

 普段は大人しい荒川が、振り返ってくすくす笑っている。

「そ、そんなことはない……『火炎旋風』っ!」

 俺はごまかすように杖を雪面に向け、魔法を放つ。

 たちまち雪が溶け、大地が見える。

「『火炎旋風』!」

 過去最大の魔力を込めた火柱は、アルトの雪を溶かし尽くした。

 その時、俺の意識は暗闇に滑り落ちていった。

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