55.一難去って……
「魔王軍襲撃! 冒険者はただちに北門に集合してください! 緊急事態です!」
スピーカーがけたたましく敵の到来を告げる。
俺は影を進み、あっという間に北門に到着する。
敵は、猛スピードで町を目指す、騎兵隊であった。
「アンデッドナイトです。どうやら魔法が使えるものも混ざっているようなので、警戒してください」
ギルドの人は慌ただしく指示を出している。
おっと、このままだと三城が死んでしまう。
今何を言っても誤解だと言われてしまうので、現行犯で捕まえるのがいい。
奴らの攻撃を防げるよう、俺は三城の近くに移動する。
「攻撃、始め!」
ハンドンの指示に、俺たちは魔法を放つ。
向こうからも魔法が飛んできた。
鋭い光線が、辺りに降り注ぐ。
芹沢らの動きはない。
「後ろの魔法隊を重点的に攻撃して! 衛士たちはアンデッドナイトの攻撃に備え!」
さらなる攻撃が飛び交う。
ついにアンデッドナイトが衛士たちと衝突した。
馬に乗ったアンデッドナイトは圧倒的に有利で、衛士たちは蹴飛ばされ、戦線はあっという間に突破されてしまった。
「剣士、盗賊は防御を! 魔術師は後ろに後退!」
ハンドンが指示を出す。
これは困った。俺が下がると、三城はたぶん死んでしまう。
「剣が降ってくるぞ! 備えろ!」
上を見上げると、短剣やダガーが雨あられと降ってくる。
「神埼! テレキネシスで打ち返せ!」
「了解!」
俺は近くのものを片っ端から向こうに投げ返す。
そのうちに、アンデッドナイトたちも倒され、戦闘は終わった。
結局、三城に魔の手が迫ることはなかった。
もしかしたら、俺が近くにいたので諦めたのかもしれないな。
少しほっとして、皆とともに城壁内に戻る。
町には、再び平和が訪れた。
俺は、念のため芹沢を尾けていく。
だが、夕暮れ時になっても、芹沢に怪しい行動は見られなかった。
ギルドで報酬を受け取った後は、他の冒険者と同じく、雑多なクエストをこなしていた。
三城が街道を歩いてくる。
路地にいた芹沢は、やにわに左手を掲げ、人差し指のみを立てる。
何かのサインか!? 俺は周囲を見渡す。
だが、怪しい行動をする者はいなかった。
拍子抜けして、再び芹沢に目線を戻すと……。
「うが……」
芹沢は、不死者と化していた。
まさか、アンデッドとして襲えば、ただの事故として処理されるという考えか!?
なんて自己犠牲的。
だが、アンデッドは大して素早くない。さっさと殺してしまえば──。
その時、芹沢が全速力で走り出す。
なっ!? 俺は一瞬遅れて、影から出て、後を追う。
芹沢は、三城に飛びかかった。
「ひゃあああっ!?」
三城の悲鳴が響く。
「はあっ!!」
俺は魔法の杖で芹沢を殴りつける。
芹沢はよろめき、二、三歩後退する。
「テレキネシス!」
俺は一旦三城を空に浮かし、避難させる。
「えっえっ、何!?」
まだ状況を理解していないらしい三城の声が空から聞こえてくる。
「うわっ、アンデッドだ! 逃げろぉっ!」
周りの人が逃げ出す。
「任せろ! 空撃槍!」
そばにいた若山が、芹沢の心臓を貫いた。
「誰か、ギルドの人を呼んできて!」
「ここに副隊長がいるんだが!?」
かくして、芹沢の陰謀は防がれた。
「ああん、怖かったぁ〜〜!」
「……はいはい、怖かったですねぇ、もう大丈夫ですよ」
三城を空から下ろしてやると、相当怖かったのか泣きついてきた。
それをあしらいつつ、やってきたギルドの人に状況を説明した。
街中に突然現れたアンデッドを倒しましたと言ったら、納得してくれた。
芹沢アンデッドの死骸は、ギルドの人が運んでいってアンデッド墓地に埋葬された。
アンデッドにも前世があるので、他のモンスターと違い、埋葬されるらしい。
後日。
「はあ、ベルクの援助が適当だったんじゃないの? せっかくアンデッド化させてもらったのに」
「はあ!? 私はちゃんとやったわ!」
「まあまあ2人とも落ち着きなさい。今は仲間が死んで悲しいふりをしておかねば」
「……そうですね」
床下は、今日も騒がしい。
とりあえず一難は去ったというものの、また襲われたりしないだろうか……?
「Mも警戒するでしょうし、これ以上の追撃はやめましょう。さすがに怪しまれる」
大丈夫そうだな……? 俺は半ば安心、半ば不安ながらギルドに戻った。




