54.恐るべき作戦
三城は、自身の体験を語り始める。
「昨日ですね、いつものようにヤツが部屋が出たところから追跡を始めると、いつもはギルドの料理屋に行くのに、ギルドによることもせず道を進んでくではありませんか」
「お前毎日芹沢のことストーカーしてたのかよ」
三城は俺のツッコミなど意にも介さず話し続ける。
「しばらく進むと、ポーション店があるところでヤツは右に曲がりました。私は隠遁を発動し、近づきました」
ふうん、こいつ結構優秀だな。意外。
「奴は男1人、女2人と話していました。なんか『バレてないだろうな』とか『順調だ』とか言ってました」
なるほど。芹沢が魔王関係者ならば、そいつらも全員関わっているか。
「そして熱心に聞き入っていたら、いつのまにか影から出ちゃってました」
……。
「つまり、慌てて逃げたと」
「うん、顔ばっちり覚えられちゃった」
「報酬減額っと」
「うわぁぁやめてやめてぇ〜!」
しかし、これじゃ三城はもう偵察には行かせられないな。
そんなことを考えていると。
「おい神埼、三城をけしかけたのはお前だな」
振り返ると、こちらを睨みつける芹沢が立っていた。
あーほら、早速来ちゃったよ。
「別に問題なかろう。前言ったように、俺は疑っている。詳細を知るためにやっただけだ」
「あーそうだな。だが俺としては面白くない。この善良な冒険者の一挙手一投足が監視されるだなんて、嫌なこったね」
確かに一理あるな。
「分かった。三城を派遣するのは中止しよう。こいつ役立たずだしな」
「えっちょっと、役立たずはひどいよぅ」
「分かればそれでいい。それと、あの場にいた3人は俺のパーティーメンバーだ。魔王軍関係者などではない」
芹沢は去っていった。
「はあ、とりあえずお前はクビ、明日から普通にクエストをやるんだな」
「はあい……。でも盗賊が活躍する場面なんて、ダンジョン探索くらいしかなくない?」
「そのダンジョン探索でもめちゃくちゃやらかしてたけどな。監視は俺がするとしよう」
芹沢は、左右を念入りに見渡した後、街道を西に向かって進み始める。
俺は後を追う。
芹沢と約束したのは、「三城を派遣しない」だから、俺が行くのはいいよね?
そのまま芹沢は進み、ポーション店の前にさしかかる。
が、そのまま素通りした。
こりゃ警戒されてるな。
芹沢はそのまま進み続ける。ついに城壁内でもかなりの外れ、建物も集合住宅から一軒家へと変わってくる。
天気は曇り。人通りも減ったので、俺は路地に一旦入り、影に入り込む。
そしてそのまま芹沢を追跡する。
芹沢は、ある家の玄関を叩く。
中から、顔をフードで覆い隠した女性が出てきて、彼を招き入れる。
俺も影伝いに家の柵に忍び込む。
さすがに家の中は明かりで照らされており、入ることはできない。
家の下に隙間があったので、そこから話を聞くことにした。
「それでせr……トロイエ。あれからKの動きは?」
「何も、けしかけないとは言ったけど、どうせまた送り込んでくるさ」
「そう。まだ私たちのことは知らないよね?」
「ああ、ベルクに関しては、まだ会ってもいないだろう?」
「うん。だけど、Mには知られた」
「消してしまうか? M単独なら俺たちの正体には気づかないだろうが、Kもとなると話は別だ。簡単にやれるか?」
「舐めないでよ。あ〜あ、Mはけっこう好きだったけどなぁ」
Kって俺のことだよな。Mは文脈からして三城だろう。
こいつらは表向きは冒険者を装っている。まさか街中で戦闘を始めるとは思わないが……。
三城に気をつけるよう言っとくか。
その時、さらに声がした。
「おい、明日でもいいだろう。作戦を練ってからの方がいい」
「もう奴はKに話したはずだ。これ以上Kが情報を手に入れる前に、情報源を断つ」
「だが、街中でやれば作戦は失敗、私らともども粛清だよ」
「俺たちが殺せばな。奴は戦って死ねばいいんだ」
「どういうことだ?」
「上に軍の派遣を依頼する。それと戦っている間に……。戦闘で死んだとて、怪しまれはしないさ」
「なるほど……いいじゃないか」
おうおう、これはもう後戻りできませんなぁ。




