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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第四章 分裂
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53.副隊長に就任しました

 日が明けて。

「これを持って、冒険者カンザキシグレは、アルト防衛隊副隊長となることを承認します」

 ハンドンはそう言い、俺に証明書を手渡す。

 俺は恭しくそれを受け取った。

 辺りに拍手が響く。


「いや、カンザキくん。了承してくれて本当にありがとう。これからしばらくは忙しくなるが、よろしく頼む」

 隊長室に戻ると、ハンドンは席に座り、引き出しから山のような書類を取り出し、机に置く。

「な、なんですか? これは……」

「今から、これ全部を片付けなきゃね。大丈夫だ。君はサインを書いてくれるだけでいいよ」


 地獄の作業が始まった。

 国への届け出、世界各地の国への通知、さらにはあらゆる国内の都市の防衛隊への通知まで……。

 合計で、100枚くらいはサインを書いた。

 その後、これまた膨大な量の規約やら法律やらを読み込まなければならなかった。

 一応は公的な立場になったので、迂闊なことができなくなったということだ。


「……疲れた」

 結局、全てを終え、宿に辿り着けたのは日がとっぷりと暮れた後だった。

 朝9時くらいから式典が始まったから、10時間くらいは書類に追われていたことになる。

 俺は風呂に入る気力もなく、眠りへと引き摺り込まれていく。



 朝。

 いつも通りにギルドで朝食をとっていると。

「……つが? 基本…のくせに副……? 調子に乗……なよ」

 隣のテーブルの冒険者パーティーが、こっちをチラチラと見ながらなんか言っている。

 まあ、基本職のくせに副隊長なんてやってたら、そりゃそうなるか。

「やあ君たち、何か言ったかい?」

「「いえ、なんでもございません! 副隊長殿!」」

「いや、敬語はいい。なんなら、年齢、冒険者としての経験からしても、俺が敬語を使わねばならん側だからな」

 そう考えると、情報を聞き出すにあたって、肩書きはろくな状況を生まないな。



『魔王軍幹部、ラプラスに関して。わがアルト防衛隊は、今後一切、ラプラスおよびその配下との戦闘を行わない。もし遭遇した場合は、速やかに帰還し、その旨を報告すること』

 ……なんじゃこりゃ。

「ああ、ありゃ敵わんからな。うっかり戦闘になって、またこの町が被害にあったりしないよう、掲示板に書いておいたんだよ」

 隊長室に怒鳴り込むと、ハンドンはそうなだめた。

「まあ構いませんけど。これって、あの森の一帯を魔王軍のものにすることを認めたことと同じじゃないですか?」

「あっ」


 あの森、正確にはセヴェル森林は、なかなか広大な森で、その北端は現在魔王軍が占領している地域に隣接する。

 すなわち、この措置は、魔王領に大きな領土を割譲したことと等しくなる。

 そんなこと、一都市の防衛隊がやっていいことなのか?

「し、仕方なかろう。大局的に見れば、あの森を死守するより、今は宥和して、後で王軍とも協力して奪還するのが適当だろう?」

「戦略には詳しくないもので、まあここは経験も技量も勝る隊長の意見に従いましょう。ただし、王都に報告しておくことはお勧めしますよ」


 ……さてと。

 副隊長室も確認しておくか。

 部屋に入ると、中は意外といい感じだった。

「……しかし、あまり使わなそうだな」

 冒険者としてはそのキャリアを終え、後方で指示を出すハンドンと違い、俺はまだ現役どころか新人冒険者だ。

 俺としては、この部屋より、大ホールで紅茶でも啜っていた方がよっぽど気持ちがいい。

 そう思いながら、部屋を後にする。


「やっほー、副隊長さぁん」

「テレキネシス! ……なんだお前か。こっちは一般冒険者立ち入り禁止のはずだろう。警備員に突き出してやる」

「まあまあ、そんな固いこと言わないで、早くテレキネシス解除してよぉ、あ助けてぇ〜!」

 その後、警備員にたっぷりと叱られ、三城がヘロヘロになって帰ってくるまで、30分かかった。


「んで、何の用だ。いい情報が手に入ったか?」

「えへへ、聞いておどろけ……芹沢っちが変なやつと話してるの、目撃しました〜!」

「ん、そうか。引き続きよろしく頼む」

「ちょっ、反応が薄いよぉ、もうちょっと褒めてよ。潜伏してこっそ〜り聞いてくるの、疲れたんだよ」

「話の内容まで!? ぜひ聞かせてくれ」

 三城は、どうやら大変な情報を仕入れてきたらしい。

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