49.トカゲの復讐劇
レプティールらの襲撃を鎮めた3日後。
『リザードマンに襲われている集落の救援。大至急 10000カラン』
と書かれている張り紙を見つけた。
「ええ、あなたたちが一度退けたそうですが、またやってきたようで」
とギルドの人は言った。
「んじゃ、けりをつけてきますよ。サインはこれでいいですか?」
「進めーっ! 今度こそ我々リザードマンの雪辱を晴らすとき! 人間の集落を滅ぼし、この森の新たな支配者となるのだ!」
雷雨轟く村に、レプティールの声が響く。
「村長さん。状況はどうですか?」
村の集会所に身を寄せていた人々に割って入り、俺は聞いた。
「ああ、また来てくださったのですか。そこの窓から見えます通り、奴らの軍勢はさらに数を増しています。このままではいずれここも落ちてしまいます」
どうやら状況は芳しくないようだ。
「とりあえず、一旦避難しましょう。集落がなくなっても、最悪アルトの宿を手配します。早く早く」
俺は村人たちを促し、森の茂みに身を潜めさせる。
「人間よ、出てこい! 怖気付いたか?」
集会所に雪崩れ込み、誰もいないことに拍子抜けしたようなリザードマンたちを収めつつ、レプティールは周りを見渡している。
爬虫類に鼻が効くイメージはないが、見つかることはなかろうか……?
「いたぞ! 人間だ!」
1匹がこちらに三叉の槍先を向けて叫ぶ。
「『火炎旋風』!」
俺は応戦する。その1匹は炎に巻かれて死んだ。
「怯むな! 空の神は我々に味方した! 恐れることはないぞ!」
その声に、リザードマンたちは一斉に突撃してくる。
「電轟雷撃!」
荒川の放った雷がリザードマンたちの心臓を貫く。
しかし残りの奴らが歩みを止めることはない。
「『煙霞』! 魔法を放ちつつ後退! 槍に気をつけろ!」
俺たちは森を駆ける。
「熱血の太刀! どうだ神埼! 俺の新技だ!」
「飛槍撃! よし1匹!」
俺たちは後退しつつも、徐々に敵の数を減らしていく。
「どうしますか首領! こちら側には魔法攻撃のできるものがいません、このままではキリがありません!」
リザードマンの1匹が、レプティールに声をかける。
「ううむ、救援を要請しろ! 奴にだ!」
「奴……はっ」
1匹は踵を返し、逆方向へと駆けていく。
「まずい! 救援を呼ばれた! 到着するまでに仕留めるぞ!」
「「了解!」」
その後も、俺たちは後退しつつリザードマンを1匹づつ仕留めていく。
「これ以上の犠牲は我々の力を弱めることにつながります、そろそろ撤退したほうが……」
他の1匹がレプティールにおずおずと声をかける。
「ならぬ、今日でなければならぬのだ!」
「なぜでございますか首領!」
「今日は11月17日、なんの日か知っておるか」
「っ……、お父上の……」
「そうだ、今日は3年前、我が父上が人間どもに殺された日。我々は今日にこそ、屈辱の歴史を終わらせなければならぬのだ!」
状況が読めてきた。
リザードマンたちは、人間に迫害された過去をもつ。
彼らの絆を産んでいるのは、人間への復讐心。
リザードマンの首領は世襲制なのだろう。今ので、周りのリザードマンの動きが変わった。
前首領の仇討ちというわけか。
「奴の父親とは誰だ? 村長、何か知っていますか?」
「分かりません、しかし、以前村に入り込んだリザードマンを殺した時、『今に我が仲間が復讐しにやってくるだろう』とか何とか言っていたような気が……」
そういうことは早めに大きい街に報告しておいたほうがいいですよ。
こうなるから!
「はあっ!」
リザードマンの槍が顔を掠める。
いつのまにか追いつかれていた。
「刀剣生成! からのテレキネシス!」
俺は刀で応戦する。
その時。
空気を切り裂く激しい音が聞こえた。
俺たちは思わず上を見上げる。
リザードマンたちすらも。
その音の主は……。
「レプティールよ、貴様はこんな人間をも倒せなかったか。まあよい、助けを求められたからには助太刀しよう」
白いタキシードに身を包み、大剣を背負った男。
「我が名はラプラス、魔王軍幹部ラプラスである」




