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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第四章 分裂
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47.怪しげな帰還者

「俺を、お前たちのパーティーに戻してくれ」

 山口はそう言った。

「何だ? 働き口が見つからなかったか?」

「まあそんなところだ。とにかく入れてくれ、さすがに貯金がやばくなってきた」

「そうか……検討しておく」

 俺はこのところよく使うようになったギルドの料理屋ののれんをくぐる。


 山口が話しかけてきたのは、俺がいつものごとくギルドの料理屋でサラダとベーコンエッグを食べようとした時のことだ。

 ちなみに飯が出てくる宿などないので、大半の冒険者はギルドで飯を食う。

 話しかけられた時、俺は耳を疑った。

 自分から接点を持ちにくるなどあまりにも無計画だからだ。

 仮に山口が黒ならば、自分から怪しまれる行動をするのは控えるべきだろう。

 俺たちと接点を持つ意味もないし、返って警戒を招く結果になる。

 であれば白だろうか? そうとは言い切れない。


窃盗(スティール)! ってもう、またじゃん。テレキネシスは反則だよう」

 今日も三城がちょっかいをかけてきた。

「丁度いい、結果の報告を」

「あっ、えっとお〜〜、あの〜〜ですね。なんと言いますか……」

「やってないんだな」

「はい……」

「よし、報酬減額っと」

「ああやめてやめて! 今日からやろうと思ってたの!」

 ほんとか?


「まあいい、とりあえず山口を重点的に調べてくれ。接触があった」

「さーいえっさーっ!」

「……何それ」

 俺は敬礼をする三城を横目で見ながら、頭の中で思案する。

 もっとも、誰も魔王軍になど関係していない可能性もある。

 俺が組み立てた説は全て、関係者が存在すると言う憶測に基づいたものだ。

 普通に考えれば、そんなことないだろう。

 だが、特段忙しくもない今のうちに、監視しておかない手はない。


「んじゃ、さっそく行ってきまーす」

「よろしく。変なことするなよ」

「さーいえっさー!」

「……やめてくんないそれ?」


 さて、俺も仕事をしよう。具体的には、井川の監視だ。

 関与があるとすれば、井川か芹沢のどちらかはほぼ黒だ。

 芹沢は三城が調べてくれるだろうから、俺は井川の監視をする。

 ……調べてくれるよな?

 俺は井川を探す。この時間は飯を食ってるはずだから、そろそろ出てくるはず……。


 いた。

 今まさにギルドの扉から出てくる、明るい髪色の少年。

 間違いなく井川だ。俺は慌てて後ろを向き、気づかれないようにする。

 横目で井川を見ると、彼は左右を確認した後、東の方へと歩き出した。

 俺は踵を返し、ゆっくりと後を尾ける。

 ギルドの周辺は、冒険者や出店、帽子から鳩を出す芸人から荷車を引いて声を張り上げる物売りまで、さまざまな人でごった返している。

 中にはどこから来たのやらエルフや獣人までいる。

 そんな状況だから、尾行はたやすい。

 気づかれることなどまずないからだ。


 井川は、どんどんと街道を進む。

 途中で右に曲がり、細い路地へと入っていった。

 俺は横の壁に体を貼り付け、そっと覗く。

 井川と何者かが話をしている。

「……は、…………できたか?」

「ああ……だ、………が………………ぜ」

 会話はよくわからないが、せめて行動を観察していると。


 男が井川に何かを手渡す。

 井川は金を払い、こちらに歩いてくる。

 俺は慌てて街道の中央まで飛び退き、何食わぬ顔で立ち去……

「よう神埼、こんなところでどうしたんだ?」

 え!? 声かけてくんの!? ってか気づいてんの?


「見ろよ、マナタイトだ。けっこう純度高いんだぞ」

「おいそれ大丈夫な奴なのか? 危ない筋のじゃないよな?」

「安心しろって。お前にも一つやるからさ、委員長には言わないでくれよ、金の無駄とかうるさいから」

「おいくら?」

「35000カラン。1個ね」

「純度は?」

「20%」

「ぼったくりじゃねえかああっ!」

 20%のマナタイトの相場は、20000カランくらいだ。

 マナタイトについて。

 マナタイトとは、魔力を貯められる鉱石の総称である。

 術者が手に持った状態で魔法を放つと、消費された魔力を自動で補充してくれる。

 あるいは、魔力切れの人に持たせると、一定程度まで魔力を回復してくれる。

 そんな便利アイテムだが、弱点もある。

 効率がクソ悪い。

 一般的な12%で、含有MP120。上級魔法打ったら終わりだ。

 一級品でも、500MPを超えるものはまずない。

 そのくせ高い。こんなん使うくらいなら魔力の自然回復待ったほうがよっぽどコスパがいい。

 このせいで、マナタイトはあまり人気ではない。国をあげた作戦で、兵士たちに最後の切り札として渡されるくらいだ。

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