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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第四章 分裂
46/73

46.抗争の始まりです

「……それで、俺にいったい何の用なんだ」

 芹沢は紅茶を啜りながらこちらを睨めつける。

 俺は、芹沢と話をしていた。

 パーティー崩壊のきっかけを作った張本人に聞けば、何かわかるかもしれぬ。

 そう思って、ギルドの料理屋に芹沢を呼び出したのだ。

「いや、なぜあのタイミングで、あんなことを言い出したのか気になってな」

 俺は長椅子の背もたれに左腕を乗せ、右手で紅茶を啜る。


「たまたま2つのパーティーが一緒になったからだ。俺1人で抜けるのはやりづらいが、多ければ気持ちも軽い」

「ほう、そのせいで大勢が迷惑被ってんだがな」

「迷惑? なぜだ。みんな自分の意思で辞めていったんだ。お前にそれを阻害する権利などない」

「確かにな。だがこちらとしては、何か裏があるのではと疑ってしまうよ」

「……俺が、魔王軍か何かと関わっていると?」

 芹沢はカップを置き、深くため息をする。


「そうかもしれんな。お前昔はそんな奴じゃなかったぞ、地味だが真面目できちんとしていた。それがねぇ」

「証拠はあるのか? 俺が魔王軍と関わっているっていう、証拠はよ!?」

 芹沢はテーブルを叩いて立ち上がる。ギルドの客たちが驚いてこちらを見た。

「……とにかく、推測だけで物を語るのはやめてもらいたい。俺だって別のパーティーに入った。彼らに迷惑が及ぶ」

 気まずくなったのか、芹沢は咳払いをしたあと座って言った。

「分かった。だが俺は、その線は捨てないからな。お前も、脱退した他の奴も、あるいはこちらの者も疑う」

 俺は金を置いて料理屋ののれんをくぐる。


窃盗(スティール)!」

 料理屋を出た瞬間、何者かに攻撃を受けた。

 俺はすかさず、声のした方にテレキネシスを発動させる。

 動けないようにした後、そいつの正体を確認すると……。

「もう、いつもひどいなぁ、冗談だって」

 三城が頬を膨らませていた。


「お前はいったい何の用だ」

 取られた財布を火炎旋風の脅しで取り返した後、俺は三城に尋ねた。

「べつに、暇だったから」

「お前は俺を軽視している節があるようだな。少し魔術師の本気というものを──」

「ああごめんなさいごめんなさい、やめてぇーーっ!」

 最近、俺はオーラというものを出せるようになったのだろうか。


「まあいい、丁度いいからお前に頼みたいことがある」

 俺は並んで街道を歩きながら言った。

「何?」

「脱退組が、魔王軍と繋がっていないか、調べろ」

「全員!?」

「全員だ。盗賊にはもってこいの仕事だろう。潜入に盗聴、証拠品の確保まで何でもできる」

「なんだか悪者みたいな扱いでいやだなあ。なんでそんなことしなくちゃいけないの?」

 三城は頬を膨らませる。俺にはそういう攻撃は効かないぞ。

「怪しいからだ。クエストの方は受けなくていいから、そっちに専念してくれ」


 三城を承諾させた後、俺はその足で宿に向かう。

 できるだけ向こうの奴らと接点を持っておきたい。

 会話をすればボロも出てくるだろうし、関係者とそれ以外を選別することもできる。

 俺は、ロビーの椅子に腰掛け食事をとっている山口に近づく。

「少し話を聞いてもいいか?」


「お前は今何をして生計を立てている?」

「フリーの冒険者だよ。意外と雇ってくれるところがなくてな」

 怪しいな。パーティーに所属すれば、それだけ行動も制限される。

「なぜパーティーを脱退した?」

「報酬が割に合わなかったからさ。俺の能力は『通信』だろ? それでタイミング合わせとかして戦ってたのに、それにしては分け前が少なかったんだ。抗議したら『お前、戦闘に参加してないだろ?』だって」

 山口はため息をつく。

「そうか。早くパーティーに入れるといいな」

 俺は山口と別れる。


 山口との会話で、新たな説が浮上した。

 黒幕は、井川ではないか。

 井川がパーティーの環境をよくないものにし、メンバーのフラストレーションを溜める。

 その上で、他の魔王軍関係者が、冒険者のふりをして芹沢に勧誘とかする。

 それに乗った芹沢が、パーティーを崩壊させる。

 脱退した奴を、魔王軍がそれぞれ取り込んでいく。

 もっとも、井川にそのような兆候は、少なくともパーティー分割の前まではなかったから、決定打はない。

 だが、警戒を怠るべきではない。

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