45.金は人をだめにする
「おらぁ! 金返せえ!」
井川の怒号で目を覚ます。
昨日、脱退組が貯金を横領していたことが発覚した。
そして今日金を取り返す手はずになっている。
「し、知らないよ! 何の話?」
平城山の当惑した声が聞こえてくる。
「お前らが貯金全部取っていったんだろうが! 半分返してもらおうか!」
「だから知らないって! 芳賀君なら知ってるかもだけど」
ドタドタという足音の後。
「おら金泥棒! 貯金半分返せや!」
「ちょ、貯金? 知らないよ!」
「とぼけるな!」
興味が湧いて来たので、ドアを開けて声のする方へ向かう。
すると、井川が芳賀の胸ぐらを掴んで揺さぶっているところだった。
「芳賀、俺らの共同貯金が無くなったことに関して、説明をしてもらおうか……」
「ひいっ! す、すみませんっ!!」
俺の顔を見て失礼な態度をした芳賀にデコピンを食らわせた後、ロビーに連行し座らせた。
「脱退した後、貯金があったことに気づいて、フロントから貯金箱をもらったら、つい出来心で……」
芳賀はぽつりぽつりと話す。俺はそれをさらに詰める。
「ほう。金はどうした……」
「ひっ、脱退組全員で山分けしたよ。みんなは君たちの分まで入ってたことは知らないはず」
「そうか。では今すぐに全員集めろ。全員から半分取り返す」
「む、無理だよ……」
「どういうことだ?」
「そっちと違って、こっちは一つのパーティーじゃない。泊くんは町をうろついてるだけだし、確か寺田さんはどこかのパーティーに入ったんじゃないかな……」
「呼べ」
「はい……」
「もうねえよ、全部使った」
「はあ!? 1週間は生活できる金額のはずだが」
「無えもんは無えんだよ」
泊は無いと言った。ならば応答は一つ。
「今すぐにギルドに行って、半額を稼いでこい」
「お前、誰に口利いてると思って……おい待てやめろ、魔法は禁止だ! ちくしょうっ!」
火炎旋風の構えをしたら、ギルドに向かって全速力で駆けていった。
もっとも、泊以外からはスムーズに回収できた。
ただ、ほぼ全員が出し渋ったため、俺は毎度毎度、魔力を手先に集中させては戻すというかなり負担の大きいことをするはめになった。
おかげで、全額が返ってくる頃には、へとへとだった。
「よし、1人280000カランね。計画的に使えよ」
俺は全員に金を配った後、部屋に戻りベッドに倒れ込む。
さて、困ったことになったな。
今回の件で、残留組と脱退組の亀裂は深まった。
全ては芳賀の出来心のせいだが、今や彼1人だけでは治しようのない大きさに広がった。
それほどまでに、金銭というものは人間関係に大きな影響を与えるのだ。
特に俺はかなり敵視されているだろう。
彼らには、俺はまるでN○Kの集金のように映ったことだろう。
個人的には、あまり亀裂が広がるのはいただけない。
よし、明日やつと話をするか。




