43.分裂と再結成
「俺はパーティーを抜ける」
次の日、俺たちが言われた通り席に着くと、呼びかけた本人、芹沢は言った。
「毎回毎回、衛士の俺を囮に盾に使い潰し、褒められもしない。そんなんねえよ」
芹沢は吐き捨てるように言う。
「そんなこと、そっちのパーティーの問題だろ? なんで俺らまで呼ばれんだよ」
泊が言った。こちらのパーティーは、口々に時間の無駄だ帰らせろと愚痴を言う。
「辞めたいって思ってんのは俺だけじゃないはずだ。何も全員店員や農家になろうってんじゃない。もっと待遇が良くて安全なパーティーに移ろうぜ」
芹沢が呼びかけると、皆は顔を見合わせる。
「俺も抜けるぞ。戦ってないからって報酬の分け前減らされてんだよ。俺が情報を伝えなきゃ危なかったところもあるのに」
山口はそう言いながら立ち上がる。
「モンスターを殺す生活なんてもうできないよ、ノイローゼになりそう」
城戸は頭を押さえながら立ち上がった。
おやおや、向こうのパーティーは大変そうだな。そう思っていると。
「正直言って、俺も飽きたわ。モンスター討伐なんて大人に任せりゃいい」
泊も立ち上がり、大きく伸びをした。
「俺も」「私も」
気づけば、半分ほどが立ち上がっていた。
へードル戦の時、冒険者たちを激励した泊と榎田。
ゾンビと化したあの4人を、慈悲の魔法で浄化した千曲も。
気持ちはわかる。たかが子供に魔物を倒させようってのが不可能な話だ。
「抜けたいなら勝手にすればいいさ。残った人でパーティーを統合すれば十分やっていける」
「ええ!? ちょっと神埼くん、いいのそれで?」
俺が言うと、日比野が諫めてくる。がそんなことは気にせず。
「いいよなそっちも? えーと、リーダーは誰だったか」
「俺だよ。まあいいんじゃないか? 強制するのも良くないし」
井川は返す。
「じゃ、話は成立だな。はい、あんたらはギルドに行って脱退手続きしといで」
脱退組を追い出し、ここに新パーティーが結成した。
加入者、全10人。
荒川(魔術師)、井川(魔術師)、石川(賢者)、神埼(魔術師)、玖珠田(修道士)、
立川(弓使い)、野口(剣士)、日比野(賢者)、三城(盗賊)、若山(槍使い)。
「さて、と。面倒くさいし、一旦両方廃止してからパーティー作り直すか?」
「そうだな。んじゃリーダー決めようぜ。神埼がリーダーなのか?」
「え? いや、私だけど、いちおう」
井川と話していると、日比野が割り込んできた。
「実質俺じゃないか? 迷宮の時も指示出してたの俺だし」
「めんどくさい書類とか書いてるのは私だよ!」
「あーはいはい。じゃここは3人でじゃんけんして決めよう」
結果。
「ここに代表者のサインをお願いします」
「はい。……これでいいですか?」
「カンザキさんですね。では、パーティー結成届は受理されました」
俺になった。
なんだか主人公ムーブかましてるが、まあ謙虚に行くこととするか。
「ちなみに、お前らレベルはどんくらいなん? 俺は29」
と井川が言った。
「俺は26だ。やっぱ剣士はレベル上がりやすいよなぁ」
「12。まあ修道士だししょうがないよね」
どうやら皆結構上がっているようだ。ちなみに俺は27。
……リーダー、同職業にレベル負けしました……。
「よし、じゃあ早速クエストするか」
そう言って掲示板を眺めると……。
『ヘーレ迷宮の損壊した壁の補修。1人5000カラン』
ん? これ俺たちのせいだな……。まあいっか産業生み出してるわけだし。
『ケルベロスの変異種、ヘルフントの討伐。300000カラン』
これは無理。そう思うと……。
「おっ、討伐クエストか。これいんじゃね?」
と井川がその紙を取る。
「お前正気か? 三十万だぞ、危険すぎる」
「え? これくらい普通にやってたが」
道理で不満が溜まるわけだ。
「はい集合。向こうのパーティーは結構危ないことしてたみたいだが、俺はそういうのはあまり好きではない。とにかく、安全第一でクエストをこなす。いいな?」
「天国だ! もうモンスターの炎を体で防がなくていいのか!」
「建築スキルを悪用される毎日におさらばだ!」
……。
俺は井川をじっと睨んだ。




