42.ダンジョンから戻りました
ガコッ
轟音と共に、壁が砕ける。
その先の空間と繋がったのだ。
そこにいたのは……。
「ひいっ、助けてぇっ!」
震えながら後ずさる3人であった。
ミノタウロスはこちらに気付き、3人を襲う手を止める。
「さあこっちに来い……インサイト!」
榎田が魔法を唱える。その手から出る魔力が、モンスターを引きつけるのだ。
若干人間にも効果があるのか、何だか無性に殴りたくなってくる。
だが、今は罪なき人間を殴っている暇はない。
「逃げろーーーっ!」
俺たちは一斉に戻る。ミノタウロスは大きな歩幅で追いかけてきた。
「広い空間なら『火炎旋風』が使える! 転送された地点まで戻れーーっ!」
俺たちは無我夢中で走る。俺はその間に詠唱を済ませた。
「今だ! やれーーっ!」
「『火炎旋風』っ!!」
ミノタウロスは業火に包まれ、呻き声を上げる。
「どうする? 第二段階やるか? ここも言うて狭いから若干危険だが」
「問題ない! たぶん!」
「大丈夫か? ……『火炎旋風』!」
その瞬間、炎が一気に大きくなり、こちらに迫ってくる。
「だめじゃねえか! 逃げろ!」
逃げる俺たちの背中を、凄まじい炎が一瞬で追い越していった。
俺は目を覚ました。
「どこだここ? ……ああ、第七か」
どうやら、俺が気絶したことで魔法が止まり、俺たちはかろうじて一命を取り留めたようだ。
そこまで俺の魔法は強力だったのか、皆はまだ目を覚さない。
「ふうっ……起きろおおおっ!!」
俺は彼らを叩き起こす。
「おおっ、助かったのか……?」
「多分な。ミノタウロスの死体がないのが気になるが……」
「みんな無事だね。って、早く3人を助けに行かないと!」
あっそうだった!
「──すかーー」
そこにいたのは、心地よく眠る3人であった。
三城と千曲は寄り添うように並んで、清水はちょっとハブられている。
三城の腕は、薬指以外復活していた。
ん? 薬指?
「おい起きろ清水、迷宮で寝るな」
「茉里ぃ〜無事でよかったぁ」
3人は、まもなく目を覚ました。
「よし、帰ろう」
「嫌です」
「帰ろう」
「もうダンジョンは嫌! 嫌ぁ!」
俺たちは、第七階層でそのまま会議に突入していた。
途中であるパーティーが、俺たちを奇異の視線で見ながら、奥の真・転移魔法陣のあるっぽい部屋へと入っていった。
が、そんなことは気にせず。
「もう魔力少ねえし、帰った方がいんじゃね?」
「いやいや、まだまだいけるぞ! 俺は」
「まあまあ落ち着いて、ここは投票で決めよう」
結果。
「ああっ、外の世界は気持ちいねえ〜」
「お前さっき左腕取れてよくそんな平和な顔できるな」
帰った。
転移魔法陣は、次へ進むモードと帰還モードがあり、帰還モードにすると一瞬で帰って来れる。
「はいはい、ついてきてー」
委員長に先導され、俺たちはアルトへの帰路についた。
見ると空は橙色に焼け、月が少しばかり顔を覗かせている。
アルトにつくころには、とっぷりと日が暮れた。
「はい、探索クエスト完了の報告ですね。何か変わったものはありましたか?」
と聞かれたので、俺たちは恐ろしきミノタウロスの存在と、俺たちの武勇伝を語った。
するとギルドの人は鼻で笑うような顔で。
「あなたたち、あんな見え見えの罠に掛かったんですか? まあ、上位モンスター討伐なので、報酬は追加で払いますね〜、はい6000カラン」
日比野は文字通り青筋を立てながら金を受け取る。
その後、俺たちは宿に着いた。
パーティーは分割されたが、宿は変わっていないので、向こうのパーティーメンバーとたびたび会う。
現に今も、ちょうど帰ってくる向こうと鉢合わせした。
珍しく全員集合したので、俺たちはロビーの椅子に座り、雑談を始める。
とはいえ、中身は苦労話ばっかである。
「聞いてくれよ、誰かさんが迷宮で見え見えの罠にかかって、そりゃもう倒すのに苦労したよ」
「マジか。だがこっちの方が酷いぜ、誰かさんが勝手に魔法を放って、ケルベロスの群れを引き寄せたんだぜ」
雑談に花を咲かせていると、誰かが声を上げた。
「明日、朝ロビーに集まってくれ。どっちのパーティーもだ」




