41.過去最大のピンチです
ミノタウロスに魔法を放ちながら、俺は考える。
なぜこんなに強力なミノタウロスが、今まで発見されず、討伐もされなかったのだろう?
答えは簡単。
誰もあんな見え見えの罠に引っかからないからだ。
罠発見の魔法を使えば、すぐに気づくし、探せば真の転移魔法陣が見つかる。
だからだ。つまり……。
「三城! お前罠発見使ってなかっただろ!」
「ま、魔力がもつか心配で……悪気はなかったから、ひっ、怒んないで……」
三城は泣きながら答える。その腕は2人の必死の救護により徐々に復活している。
流石に罪悪感を感じたので、責めないでおく。
今は目の前の敵に集中しなければ。
「委員長! あいつの弱点はなんだ!?」
「物理攻撃……って無理だよっ! 間合いに入る前に殺される!」
「くそっ。全員! 遠距離からの攻撃に注力! できるだけ物理系!」
俺は指示を飛ばしつつ、後ろに飛びすさる。皆も徐々に後退していく。
「刀剣生成。からのテレキネシス!」
最近では、風魔法を使わずとも剣を飛ばせるようになった。
剣はミノタウロスの体に刺さる。しかし奴はそれをまるでただの矢のように引き抜き、再び進み始める。
俺は負けじと次々と剣を生成し、飛ばしていく。
「神埼! 魔力が切れる!」
「何!? お前もっと魔力あったはずだろ!」
「ゴブリン相手に使いすぎた!」
「何〜〜!?」
泊が無責任なことを言う。ここでの1人離脱は大ダメージだ。
「分かった下がれ! 全員! 魔力を確認しながら撃て! 魔力がなくなると敏捷性にも影響が出る!」
「「了解!」」
俺は魔力が多いので、気にすることはないと思うが、いちおう確認しておく。
MP:5030/10000
嘘だろ?
何でもう半分減ってるんだ?
周りの皆も、魔力を確認したのか、うろたえている。
「どうやら、魔力を吸収する罠のようなものがあるらしい! それを確認でき次第破壊しろ!」
俺はいったん剣を飛ばす手を休め、壁を手探りで探す。
あった。
目視で確認すると、小さな魔法陣が彫られている。
俺は躊躇なくそれを剣で破壊した。
ガコン!
何だ?
まさか罠か!? 俺は慌てて戦闘体制を取る。
直後、まばゆい光が俺を包んだ。
目を開けると、ミノタウロスが消えていた。
いや、俺たちが移動したと言うほうが正しいだろう。
確かに飛び散った血液や、壁の抉られた跡がない。
「いたた……みんな無事!?」
「俺は平気だ」「大丈夫」「なんとか……」
えーと、このパーティーは10人だったな。ひい、ふう、みい……。
……なな?
「おい、3人いないぞ!!」
「誰だ……はっ」
俺たちは気づいてしまった。
白く輝いた魔法陣。それは確かに俺たちを包んだ。
前線で戦っていた俺たちを。
すなわち、後ろに下がって治療にあたっていた3人は……。
「三城さーん! 清水くーん! 千曲さーん! 聞こえていたら返事してー!」
日比野が叫ぶ。声はなかった。
「おい、これはやばいんじゃねえのか? 修道士と怪我人じゃ戦えねえよ」
「冥福を祈っとこう。いい奴だったよお前は……」
辺りがざわつきだす。今回ばかりは日比野も止める余裕がない。
どうする? 今回は完全に俺の責任だ。俺がなんとかしなければ……。
まずはどうやって第七階層に戻るかだ。
「どこかの壁が第七に繋がってるかもしれん。手当たり次第ぶっ壊せ!」
「「おーーーーっ!!」」
土木工事スタート。
俺たちは壁を、剣で、槍で、魔法で壊しまくった。
スライムが出てくれば斬り殺し、ゴブリンの群れが出てきたらまとめて焼いた。
四角い路地は、広い洞窟へと変貌した。
「はあっ、はあっ、はあっ、全然見つからねえ……」
「本当に繋がってんのか?」
時間が経てば経つほど生存確率が下がっていく。俺は人生で1番の焦りを感じていた。
人生で初めての定期テストの返却時よりもだ。
「あっ、こっちから生命反応を確認! 4つある!」
日比野が叫ぶ。彼女はとある壁を指さしている。
「掘れーーっ!」
俺たちは無我夢中でその壁を掘る。




