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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第四章 分裂
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39.迷宮へ行きましょう

 アルトに帰還し2週間。

 山ははげ、肌寒い風の吹く冬がやってきた。

 俺たちの快適な冒険者ライフも、次のステップへと進む段階だ。

「なになに? ヘーレ迷宮探索者募集中? 報酬一人50000カラン!? おーいみんな! 儲け話だよ!」

 ある日突然、平城山がギルドのクエスト募集の紙を持ってきた。

「50000か。いいじゃねえか、腕試しにもちょうどいい」

「迷宮か、わくわくするなぁ」

 皆も乗り気で、たちまち話はまとまった。


「はい、10人パーティーで迷宮探索クエストの受諾ですね。こちら前払いのクエストとなっておりまして、成果に応じて追加報酬が支払われます。ではこちらにサインを」

 代表の日比野がサインし、金を受け取る。

「では注意事項等お話しさせていただきます……あれ?」

 ギルドの人の話もろくにきかず、俺たちはギルドを飛び出した。



 この世界の迷宮あるいはダンジョンは、自然に作られるものではない。

 大半は貴族が金にものを言わせて作らせた、金持ちの道楽だ。

 そんなのは作りも単純で、たちまち手だれの冒険者に攻略される。

 貴族だから、お宝はそれはそれは豪華で、ひとたびダンジョンができたと聞けば皆こぞって出かける。


 だが時々たまに、「真のダンジョン」が紛れている。

 長い時を生きた魔族とか、不死王(リッチー)、あるいは狂った魔法研究家。

 そんなのが、全てを、人生さえも(なげう)って作るのだ。

 「冒険者殺し」を。


 中は魔物と罠であふれ、財宝欲しさにやってくる冒険者たちの命を刈り取っていく。

 そんな自身の傑作の最奥で、彼らは静かに待つのだ。

 自身を倒すものの到来を。



 このヘーレ迷宮は、おそらく後者だろうと予測されている。

 その根拠は、帰還率の低さだ。

 通常の道楽ダンジョンは、低くても9割が無傷で生還する。

 しかしこのヘーレ迷宮は、今まで潜った300人のうち、70人が未だ帰還せず、130人は身体欠損など重傷を負って帰還した。

 死傷率3分の2というこの脅威の殺戮迷宮に、俺たちは無策で挑んでいるということだ。


 ではなぜそれを言わないのか。

 興味があるからだ。迷宮というものに。

 俺は決して痛々しい厨二病ではないが、こんな世界にいれば否が応でもそういうものに興味が出てくる。

 自身の最大の力を尽くして戦うということは、かくも興奮するものかと思うのである。

 感覚は激辛カレーに似ている。

 食べた瞬間は耐えがたい痛みと暑さに襲われ、頼んだことを後悔さえする。

 だが、しばらくすると食べたくなってくるのだ。


 魔術師(ウィザード)だからましなものの、戦闘時は本当に頭と体を使う。

 それこそ耐えがたい苦難だ。

 だがそこからしか得られない楽しみがあるのだ。

 人が死ぬかもしれないのに、こんなことを考える俺はおかしいだろうか。


「ついたぞ。意外と町から近いな」

 声に目線を上げると、目の前には巨大な洞窟があった。

 だが普通の洞窟ではない。

 たいまつもないのに薄明るく不気味だ。

 なのに奥は真っ暗で、床があるかどうかさえうかがい知ることはできない。

「おお……ヤバい空気を感じるな」

 榎田が剣を構えながら呟く。


「はいはい、まずは作戦を考えよう」

 日比野が言う。俺たちは草むらに座った。

「このパーティーは攻撃特化で、衛士(プロテクター)が一人もいない。これは迷宮攻略では致命的だ。何か作戦がある人はいる?」

「まあ、順当に剣士(ソードマン)の榎田が最前、その後ろに槍使い(ランサー)の若山。罠発見に盗賊の三城、攻撃力の弱い修道士(プリースト)の清水と千曲は1番真ん中。この陣形が1番だな」

 俺は提案する。正直これが1番合理的だ。

「えなんであたしが1番前なん!? 確かにあたし剣士だけどさ、防御力が高いわけじゃないって!」

「じゃあお前以外に誰がいるんだよ。お前が1番防御力高いんだよ」

 榎田の反論に、俺は言い返す。これは事実だ、諦めろ榎田菜奈。


「はいはい落ち着いて。私はそれでいいと思うけど、みんなは?」

「いいぞ」「おっけ〜」「……賛成」「それが1番だねぇ」

 榎田以外は賛成する。すると榎田も渋々頷いた。

「ありがとう榎田さん。それじゃ迷宮探索レッツゴー!」

「「おー!!」」

 こうして俺たちは迷宮に潜った。

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