37.オークと戦いました
俺たちは、前線に到着した。
前線では、オークの侵攻をエルフの魔法攻撃が何とか抑えている状況だった。
「数が多すぎます! このままだと近接戦に持ち込まれます!」
「仕方ない、後退しろ! 魔法を打ちながら後ろに下がれ!」
戦いを呆然と眺めていると、西エルフ国軍の長官、グラディウスがこちらに気づいた。
「ああ、王国の方達ですね。待ち侘びていました。どうか協力をお願いします」
「まあ、いいですけど。それにしても、とんでもない数のオークが来ていますね」
「はい、推定で10万頭はいるでしょう。ですから、魔法を打っても打っても、波を止めることができないのです」
「よし、やるか……『煙霞』」
100頭ほどのオークがもがきはじめる。それらはまもなく倒れた。
しかし、仲間の死をものともせず、オークは進み始める。
「くそ、『火炎旋風』!」
オークを火が包む。急いでいたので無詠唱だったが、問題ない威力だ。
「俺らもやるぞ、盤弾!」
「光よ、敵を切り裂け! 電光!」
確かにオークは次々と倒れていく。しかしこれだけなら、エルフ軍だけで倒せるはずでは?
「あの、エルフ軍の残りってどこにいるんですか? ここには数十人くらいしかいませんが……」
「ああ、これで全員ですよ。人数が少なくて、困っていたんです」
すっくな! そりゃ強いエルフでも勝てないわ。
「なら、俺たちも充分役に立てそうですね」
「ええ、とても助かります」
その後も、俺たちは魔法を打ち続けた。
日が沈み、またたく星空が沈んだ。
「何で徹夜で戦闘なんだよ!」
今夜、火焔旋風を8回、煙霞を12回、不知火を29回使用した。
俺以外は全員魔力切れ。俺もすでに1割くらいしか残っていない。
オークはまだ半分以上が残り、愚鈍に侵攻を続けている。
「まずいですよ。俺もそろそろ魔力が切れます」
「困ったな。剣士たちも活用したいけど、あそこに放り込んだら死んでしまうし……」
「あっやばい、MP表示が点滅しだした」
「くそっ、東の援軍はまだか!」
俺たちは敗走した。
前線は、首都から30キロの位置にまで押し込まれた。
次に撤退する道はない。
「周りの国々に支援の要請を! そっちは住民の避難を!」
兵士が一人、また一人と去っていく。
「すまない、はるばるこの西エルフ国まで来ていただいたのに。あなたたちだけでも逃げてください」
「いや、俺たちはまだ戦います。ここで逃げれば、アルトの冒険者の恥です。それはそうと、魔法の使える住民たちを根こそぎ連れてきてください。彼らも戦力ですから」
「それなら、もうすぐ来ると──」
その時、轟音を響かせ、エルフの大群がやってきた。
中には、布団叩きを持った主婦や、ゴルフクラブを構えたおじさんまでいる。
「私たちも戦うぞ! エルフの国を守るんだ!」
「魔法はエルフの得意分野だ! 今こそレーゼンの市民が団結する時!」
彼らは前線につくなり、次々と魔法を放つ。
戦況は大きく動いた。
数で大きく勝るオーク軍が、どんどんとその数を減らしている。
今や、10万の軍勢は、1割未満になっていた。
「西を救うぞ! 撃てーっ!」
そこに、東エルフ国の軍隊も駆けつけた。
それは小規模であったが、とても大きな助けだ。
俺も、最後の魔力を使うことにした、
「紅蓮の炎よ、龍の如く舞い、我が敵を燃やし尽くせ、『火炎旋風』!」
残っていたオークを、炎がまとめて覆う。
「廻れ炎よ、その奔流において全てを焼き尽くせ、『火炎旋風』っ!!」
巨大な火柱が上がり、オークは上空に吹き飛ばされる。
薄れる意識の中、俺が最後に聞いたのは情けなきオークの呻き声であった。




