35.新しい装備を手に入れました
「本当にありがとうございました」
「ええ、ぜひまた」
俺は家を出て、集会所に向かう。
すでに何人か集まっていた。
俺たちは今からアルトに帰り、この村の良さを語る必要がある。
そうしなければ、この村は失われてしまう。
「では、ただいまより転送を開始いたします」
術者が言う。
村の人たちが、見送りに集まってきた。
「さようなら〜」
「よろしくお願いします〜」
俺たちも、挨拶を返した。
周りが光り輝き、視界が白く染まる。
目を開けると、そこはアルトの冒険者ギルドの一室であった。
「本当に便利だな。俺たちも覚えられないのか?」
「企業秘密ですから」
そんなことを話していると、ドアが開き、アルトに残っていた役人たちが入ってきた。
「お帰りなさい。どうでしたか、エルフの村とやらは」
「どうせ大したものではなかったでしょう。はい、さっさと会議を済ませましょう」
どうやら、彼らはまだ村の保存に否定的なようだ。
俺たちは会議に参加できないが、またお祈りすることとしよう。
「じゃあ、会議が終わるまで自由時間ね。解散」
俺は、装備を新調することにした。
まず、武器店に入る。
今までの杖は魔法石の密度が低い劣化版だったが、金に余裕が出たので密度が高めのやつを買いたい。
「いらっしゃい。何をお探しです?」
「火属性の魔法の杖を。予算は8000カランで」
「あいよ。えーと、これなんかどうです?」
先端に宝玉がついた木製の杖。持ってみても軽く、扱いやすそうだ。
「おお、これはいいやつだな。これにする」
「まいど」
外に出て、試し撃ちをしてみる。
城門の外に出て、そこにいたスライムを倒すことにした。
「火球!」
いつもより一回り大きい火の玉が出た。
これは上質な杖のようだ。儲け物だな。
次に、防具屋に入る。
「魔術師なんだが、おすすめの服はあるか?」
「魔術師なら、魔力の流出を防げるスペルシルク製の服がおすすめですね。予算は?」
「4000カランで。火属性だから、赤系の色がいいかな」
「なら、これがおすすめですね」
そう言って店員が見せた服は、なかなかいいデザインだった。
白地で、襟元に縫い目がついた、いわゆる冒険者って感じの服と、臙脂色のマントのセット。
下半身は、中世ヨーロッパを彷彿とさせる焦げ茶色のズボン。
「ほう。試着してもいいか」
「どうぞ、奥に試着室があります」
「うん、いいな」
とてもかっこいい。ザ・冒険者って感じの服だ。
あとズボンには、杖を刀みたいに差せるベルトがあって、両手が空く。
見た目よし、機能性よし、着ごごちよしと、三拍子揃ったいい服だ。
「これにする」
「毎度あり」
うん。視線が変わった。
れっきとした冒険者として見られている気がする。
まあ、冒険者なんてどこにでもいるが。
「おっ、カンザキくん。服買ったのかい」
パン屋台の店主が声をかけてきた。
「ああ、やっぱり服を変えると気持ちも変わるな」
「そうか、なら腹も満たしておかねえか? ちょうど焼きたてだ」
「おっ、一つ頼む」
この世界の特徴として、建物の店は店員が丁寧だが、屋台は店員がタメ口である。
まあ、その方がいい。
フランスパンみたいなのをかじりながらギルドに戻ると、他の人も集まっていた。
って……。
「おう神埼、お前も装備買ったんか」
何でみんな装備新しくなってんだよ!




