34.ちびっこに負けました
「ねえおにいさん、おにいさんは強いの?」
「さあ、レベルは21だが。普通の人がどれくらいかも知らんし。まあ、魔法は得意な方だとは思ってるが」
「へえ。やってみて」
ということで、俺の合成魔法を披露することになった。
庭に出て、森の方に腕を向ける。
「何にしようかねえ……『不知火』」
黒い炎が森へと飛んでいく。
「あっやばい、山火事になる」
見る間に火が燃え移り、森が燃え出した。
「ちょっと何やってるの、スプラッシュ」
リリアは手から水しぶきを出し、火を消していく。
やがて、火は消し止められた。
「何やってるの、森に向かって火魔法を打つなんて。おにいさんばか?」
「バカとは何だ! ……いやバカか」
「そうだよ。やれやれ、冒険者なのに常識ないね〜」
何だこいつ。ちょっと前まで人見知りだったのに、俺1人になったとたん性格変わったぞ?
「こんなことしてないで、色々とやることあるんだからさっさと片付けよ」
「やること? 何だ」
俺らは、家事を始めた。
「だめ! それ水で洗ったらちぢむ!」
「あーもう、カタミ草はこっち向きに切るの。繊維切らないと固くなるよ」
「火加減が強すぎる、入ったらやけどしちゃうよ」
「何やってるの!? 魔法の杖は聖水で洗わないと威力が下がるよ?」
「おにいちゃん家事へったくそ!」
……難しいよ。
その後、俺たちは何とか家事を全て終わらせた。
エルフは、大人は仕事をし、大きくなった子どもは、家で家事をするのが普通なのだそうだ。
だいたい150歳くらいで成人と言われているから(エルフで)、俺は大きいくせに家事へったくその変なやつに見えたことだろう。
さて、リリアはこんな俺をこう酷評した。
「そんなんじゃ、誰もけっこんしてくれないよ」
余計なお世話だ!
「ただいま。カンザキさん、うちの娘の面倒を見てくださり、ありがとうございます」
「いえいえ、むしろこちらが面倒を見られたくらいです」
「そう。おにいちゃん家事ぜんぜんできない」
「こら、そんなことを言うんじゃないよ。すいませんね」
「大丈夫ですよ。それより、ご飯ができてますよ」
「ほとんどわたしが作った」
俺たちは、テーブルに座り、エルフの郷土料理を楽しんだ。
これがまた美味しいのだ。米っぽい穀物があって、それはそれは嬉しかった。
「んで、役人たちの反応はどうでした?」
「結構よかったですよ。いろいろな名所、料理とかを見せるたびに驚き、感心していました」
「それは良かったですね。俺も、この村は残すべきだと思います」
「そう言っていただき嬉しいです。あ、飲み物のおかわり、いりますか」
「ありがとうございます。これって、どういうふうに作ってるんですか?」
その後、俺たちは床に就いた。
部屋は、子供部屋っぽいところを貸してもらった。
明日、俺たちはアルトに帰り、そこでこの村の行く末が決まる。
そう考えると、夜も寝付けない。
「……熟睡した」
非常によく眠れた。久しぶりの清々しい朝であった。
やはり、自然の豊かさだろうか。何だか体が軽い。
リビングに行くと、すでに両親は朝食を作っていた。
「ああ、おはようございます。朝食は、いつものものでいいですか?」
「もちろん。ってこれは!」
「ああ、これは豆を発酵させて作る郷土料理です。どうかしました?」
まじかあ。異世界に来て納豆が食べられるとは。
「いや、私の生まれた地域に似たようなものがあって。懐かしくてつい」
「あの、すいませんがリリアを起こしてきてくれませんか?」
「いいですよ」
俺は部屋へ向かい、電気をつける。
「起きろー、朝飯だぞ」
「むにゃ、もうちょっと」
「だめだ、はよ起きろ」
ゆっさゆっさと体を揺らすと、ようやく起きた。
「もうお父さん、いつも朝早いんだから。……って何で家事へったくそにいちゃんがここにいるのよ!」
……何だよ家事へったくそにいちゃんって。




