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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第三章 エルフの村とエルフ国
32/72

32.冒険者は正義感が強いですか?

 朝。

「森の調査クエスト、終わりましたー」

「あ、はーい! こちらが調査書ですね。ふむふむ……?」

 ギルドに中身の濃い調査書を渡すと、ギルドの人はうんうんうなりだした。

「スライム? エルフの村!? え、スライムがここに? え!?」

 その後、全てを説明し、理解してもらえるまでまる1時間かかった。


「では、道路は当初の計画通り、まっすぐ引くことにする。道中のエルフの村は駅にし、スライムで村おこしということだが、それも前向きに検討しよう。その件については、これから両エルフ国と会談をするので、そこで話し合いたいと思う」

 会談のために来ていた、王国の役人は言った。

 俺たちは会議に出席することなどできないが、外野から応援することとしよう。


「「何でだめなのよーっ!」」

 会議場から出てきた役人は、無理そうだと告げた。

「何で? あの森が国立公園にでもなってんの?」

「駅は作るのに、村は潰すなんてひどい!」

「はい静かに静かに! 役人さん、理由を聞かせてもらえますか?」

 日比野が場を収め、役人を問いただす。

「サレン川同盟の条文に、エルフは西岸、人は東岸に住むというものがあってな。もとは住む場所での競合を避けるためのものだったのだが。この規定に従えば、彼らはもう森に住むことはできない。西エルフ国に追放という扱いになる」


「これは困ったな。せめて村は存続させておいて欲しかったのだが」

「今からデモを起こそう! 工事現場を塞ぎ、要求を飲ませるんだ!」

「この国では、国家事業の妨害は犯罪だぞ。あとデモなんて法律で認められてない」

 議論は紛糾している。しかし厄介な条文があったものだな。向こう側に人の集落があればいいが、歴史的にそれはないだろう。


「よし、とりあえずギルドのみんなに話して、みんなの意見を聞こう」

「それはいい。同じ意見なら、全員で圧力をかけられる」

 俺たちは、ギルドの大広間に向かった。

「皆さん、聞いてください」

 そこから、日比野たちがエルフ村について話すと、皆は口々に言った。

「そりゃひでえ。俺たちも協力するぜ」

「おう。共に戦おうじゃないか!」


 役人が出てくると、たちまち冒険者たちに囲まれた。

「おい役人、何とかしろよ!」

「こういう時に働くのが仕事だろ! 何のためにたっけえ税金払ってると思ってんだ!」

「静かに! 静かに! わかったわかった、西エルフ国と村を視察する計画を立てよう、それで納得してくれるか」

「「まあいいだろう」」


 そういえば、何でここの冒険者たちはこんなに正義感があるのだろうか?

「エルフだぞ! あの白い髪で長い耳のエルフがあの森にいるんだ! 会ってみたいねえ」

 ……下心満載じゃねえか。


 呆れていると、俺たちはギルドの人に呼ばれた。

「視察の案内をお願いしたいんです」

「「嫌です」」

「なんで!?」

「遠いじゃないですか。少しゆっくりしたいですよ、金も入ってきたし」

 俺も嫌だ。あの平和な森の視察に、引率などいらんだろう。


「大丈夫ですよ、転移魔法(テレポート)を使います」

「はあ!? 魔法あんなら先に言ってくれよ! 馬車で行くの大変だったんだぞ!」

「だって、聞かなかったじゃないですか。馬車で行くなんて、よっぽど暇人なんだなあと思いましたよ」

 ギルドの人によると、転移魔法(テレポート)は特殊な魔法で、地面に魔法陣を描いて発動するらしい。

 使える人は少数で、その方法は基本的にギルドの秘匿情報だ。

 冒険者が遠地でクエストをする時には、よく利用されるらしい。

 馬車を使ってゆっくりとなんて、商人や旅行者など一般人しかしない。


「ということで、皆さん案内してくれますかね……あちょっと、指をポキポキ鳴らしながらこっちへ来ないでください、私に罪はありませぎゃああああああ!!」

 どうやら、情報を隠す意地悪なギルドの人は断罪されたようだ。

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