31.スライムの森計画、始動
エルフの村にて。
「……あの、一ついいですかね? この森、やけにスライムが多いんですが、何かご存知です?」
「スライム? ……さあ、確かに多いような気はするが。何か知ってるか?」
俺の問いかけに、両親は首をかしげる。しかしリリアは俯いて震え出した。
「ん? 何か知ってるのか? 父さんに言いなさい、彼らが困っている」
「……わ、私が育てた……」
「「スライムを育てたぁ!?」」
その場の全員が飛び上がった。
「この村が、あぶないって聞いたから、スライムでなんとかしようって思ったの……ごめんなさい」
「そうか、しかしスライムじゃなあ……。とにかく、スライムは私たちで何とかするぞ。すみません、本当にうちの娘が」
「村が危ない? 何かあるんですか?」
俺が問うと、アイセンは深く息をついてから話す。
「近々、この森を貫く街道が作られるらしいのです。この村は、その経路に近い。下手すれば、見つかってしまうかも。そうすれば、私たちはここを追われるかもしれません」
アイセンの言葉に、俺たちは顔を見合わせる。なんたって、俺たちはその街道を作るための調査に来ているからだ。
「それをなんとかしようと、スライムを育てる……スライムで妨害でもするつもりだったんでしょうか」
「多分そうです。まあ、この話は忘れてください。この辺に冒険者が来るのは珍しい。おおかた、道路整備の事前調査に来たのでしょう? その邪魔はしません」
「しかしどうするよ。報告しないわけにはいかんし」
「でもねえ。かわいそうだしね」
「いっそのこと、ここをサービスエリアみたいにして盛り上げたら?」
俺たちは、集落の外れで1時間ほど話し合っている。
答えは未だ出ていない。
「スライム、集め終わりましたよ。しかしいったい何をするんですか?」
アイセンが俺たちを呼んだ。俺たちは立ち上がり、そちらへ駆けていく。
榎田がよると、スライムはぴょんと跳ね榎田にじゃれついた。
「えっ!? スライムが敵対しない!? 私も体当たりされながら育てたのに」
リリアが目を丸くする。けっこう頑張ったんだなあんた。
「まあ、そういう魔法みたいなもんよ。とりあえず、こいつらはもらっていいですか?」
「どうぞどうぞ」
俺たちが歩き出すと、数百匹のスライムがついてきた。
「んで、なんでスライムをもらってきたんだよ。うちでは飼えんぞ」
そういうと、榎田は息をつき、俺を馬鹿にするような目線を向ける。
「わかってないなぁ、ここをスライムの森に改造すんのよ」
「どういうことだよ」
「街道ができれば、ここにも駅ができるわけじゃん。それをスライムで盛り上げようって話。村の人たちも、それもいいかもしれないって言ってくれたし」
つまり、スライムゼリーとかスライムアイスとかぬいぐるみとか売るってことか。
「なるほど、それもいいかもしれんな」
「スライムかわいいもんね」
「あっ、おかえりー……って何そのスライム!?」
帰ってくると、日比野は飛び上がって驚いた。
「実はねぇ……」
俺たちは、エルフの村のこと、スライム計画について話した。
「あと、エルフの人たちによると、この森に危険なモンスターはいないらしい。地図もくれたぞ」
そう言って、俺は地図を手渡す。
「おお、詳細に書いてあるねぇ。これならもう大丈夫だね。今日は寝て、明日から帰ろうか」
「「はーい」」
俺たちは、森で最後の夜を明かした。
「……今日はスライムと遊ぶ夢だった」
悪夢じゃなかったのでよしとしよう。
「じゃあ帰るよ、せいれーつ」
俺たちは、森の入り口に向かう。
そこには、来た時と同じところに、馬車があった。
疲れが出ていたのか、運転手は席で眠りこけている。2頭立ての馬も大人しく寝ていた。
そこからアルトへは、一泊して向かった。その旅路は省略させてもらう。
アルトに着いた時には、すでに9時を回っていた。ギルドへの報告や報酬の受け取りは、明日することにした。




