29.不思議なふしぎなスライムの森
森はとても静かだった。
危なげな雰囲気はなく、もしかしたらクマがいる日本の森よりも安全かもしれない。
もっとも、奥の方に強大なモンスターがいて、それに怖気付いてモンスターが寄り付かないだけの可能性もあるが。
「んー、この辺りの地形は平らだし、道路は真っすぐ通せるかな」
日比野が地図を見ながら言った。この地図、勝手に周りの地形を書いてくれるとても便利な地図なのだ。
地図によると、ここから川まで地形は平らで、おそらく真っすぐな街道を作ることができる。
「しっかし、この森は広いな。向こうまで行ったら夜になっちまうぜ」
泊がぼやく。この森の幅は、最短部でも50kmほどある。1日ではとても探索できた広さではない。
「困ったねえ……。よし、二手に分かれよう。片方は川の方へ、もう片方は左右を探索して」
「「了解〜」」
俺は左右を探索する方へ入った。
「よし、もう一度二手に分かれるか。左右をそれぞれよろしく」
「「へい」」
11人のパーティーが分かれて6人、さらにそれを分けて3人ずつである。
俺と榎田、三城が右手を探索することになった。
「……不安しかない」
「え〜、そんなこと言わないでよ〜」
「だってお前カエル戦のときめちゃくちゃやらかしてただろ! 心配にもなるわ!」
「うっ、……ひっ、わ、私だってちゃんとやるもん」
「あー泣かないで泣かないで。ちょっと、優しくしなさいよ」
なぜ俺が責められなければならないのだ?
「あーはいはい、すみませんでした。それじゃ行きますよ」
「「……はーい」」
しっかしまた、何もないのがこの森である。
「何もないね、どうしてだろ?」
「さあ、たまにはそんな場所もあるんじゃね?」
雑談しながら歩いていると、突然強力な気配を感じた。
「構えろ、敵襲だ!」
俺の前に現れたのは……スライムであった。
「「……へっ?」」
気配に対して明らかに雑魚だ。もしかして、囲まれたか?
「んまあ、とりあえず倒すか」
「ぐぎゃ」
すると、その後ろからまたスライムが現れる。
「ぐぎゃあ」
また後ろから、後ろから……。
「ふぎゃ」「むぎゃ」「ひやぁぁ」
いくら倒しても、後ろからスライムがやってくる。
「はあ、はあ、多すぎんだろ」
結局、全部倒すのに20分近くかかった。
合計で150匹は越える数のスライムが出てきたことになる。
俺も、上がりそうだったレベルが1上がってしまった。
「やっぱこの森、平和だけどなんかおかしいんよなあ」
「ねえ」
その後、15時くらいまで前後左右に動き回って隅々まで探索した。
自分の居場所までわかる便利な地図があるから、めちゃくちゃに動いてもちゃんと帰れるのがいいところだ。
結局、今日の夜は二手に別れた地点で野営ということになった。
17時には全員が集まり、昨日と同じような夕食をとった。
「明日は、今日と同じ編成で、3方を探索します。昨日とはできるだけ違った場所を通るようにしてください」
「「はーい」」
リュックの中に入れておいた魔法の寝袋で皆は眠った。
「……だから何でスライムに襲われる夢なんだよ!!」
最悪だ。何で2日連続でスライムに安眠を乱されなくてはならないのだ。
昨日の夢も半ば的中したし、今日もスライムには警戒しよう。
そう思うのであった。
朝食は、その辺で取ってきた食べられる野草である。
流石にヤギの気分になるのはいい心地ではなかったが、不味くはなかった。
「スライムだああ!」
三城が叫ぶ。見ると、三城がスライムの体当たりを受けるその瞬間であった。
「スライムくらい自分で倒せるだろ。って多っ!」
瞬きをした後には、三城は100匹を越えるスライムの下敷きになっていた。
「……た、たすけて……」
三城はスライムの山から片腕を出し、SOSサインを出しながら言う。
流石にかわいそうなので、スライムを小刀で切り刻み、三城を救出した。
「ふえ、ありがと……」
三城の体がスライムでベットベトになっているので、ちょっと離れることにした。




