24.残酷な不死王
「愚かなる人間どもよ、その選択を後悔するがいい……破壊雷!」
杖の先から、黒い稲妻が放たれる。
俺たちは慌てて左右に逃げる。
城壁はさらに崩れ、クレーターはその大きさを増した。
「逃げ惑うのみか。先ほどまでの威勢とは程遠いな」
へードルはさらに稲妻を放つ。
俺たちはただ逃げ惑うばかりだった。
30分ほど後、町の北は荒地と化していた。
あちこちにクレーターができ、そこから黒い煙が上がっている。
城壁は崩れ去り、民家や店もあらかた崩壊している。
冒険者も、数十人が倒れ、修道士たちが必死の治療を行なっている。
しかし、もう数人が手遅れだと聞いた。
かく言う俺も、左手から血を流し、肩で息をしている。
「我が魔力よ、神聖なる魔方陣を描き、魔の者を打ち砕け、破魔殺陣!」
突然、冒険者の1人が魔法を放った。
白い光がへードルを包む。
「っ、何だ? ……強力な祓魔魔法か」
あまり効いていないようだ。しかし、続けて何人もが、魔法を放った。
「神聖なる力よ、世の理に反するものを打ち砕け……破魔!」
「神聖なる力よ、不浄なる存在をこの世より追放せよ……退魔撃!」
へードルはうろたえる。しかし、次々と飛んでくる魔法を何とか抑えた。
「はあっ、はあっ……。危ない危ない、危うく浄化されてしまうところだった」
「おっ、HPが半分まで削れています!」
日比野は言った。やはり祓魔攻撃は効くようだ。
「よし、祓魔はエルフの得意分野、私たちが一気に畳み掛けましょう」
グラディウスが言う。グローヌも頷いた。
「東エルフ国軍魔導隊、魔法用意! ……撃てーっ!」
「西エルフ国軍魔法攻撃隊、魔法発動準備! ……撃てーっ!」
両エルフ国軍の兵士が、一斉に魔法を放つ。
巨大な白い光が、へードルに向かって突き進む。
「ただでやられると思うな……盤壁!」
へードルの周りの土が盛り上がり、壁を形成する。
光は壁に阻まれた。
「まだだ! 威力を強めろ! 壁を貫け!」
司令官の合図に合わせ、光はさらに強くなった。
「みんなも撃て! 我々も協力するぞ!」
アルト防衛隊も、次々と魔法を放つ。
壁にひびが入り、そして崩れた。
「うぎゃあーーーっ!」
へードルの悲鳴が聞こえてきた。
「へードルのHP、残り1割です!」
日比野が言った。
へードルは杖で体を支え、ふらふらになっていた。
「くそう、この我がここまで追い詰められるとは……」
「よし、もう一回撃て! それでとどめを刺すぞ!」
グローヌは言った。兵士たちが、魔法の詠唱を始める。
「しかし、ここで絶えるわけにはいかぬ。魔王軍幹部として、その誇りが許さん!」
へードルの周りに、黒い巨大な魔法陣が描かれる。
魔方陣の大きさは、半径100メートルはあろうか。
魔方陣はさらに巨大化し、俺たちの足元まで達した。
「逃げろ! 何か来るぞ!」
俺たちは魔法陣から逃げる。
何とか大地に足を置く。振り返ると、数十名が魔方陣の中に取り残されている。
「何をしている。早く逃げろ!」
「無理だ! 足が動かないんだ!」
その中には、俺たちの知った顔も混ざっていた。
初めて出会ったパーティーの人たちだった。
「生ける者たちよ、その魂を捨て、我が僕となれ……人死霊術」
「うわあああっ、がっ……」
人々は悲鳴を上げ、ついに醜いアンデッドと化した。
「さあ人を襲え、殺せ、喰らえ! 人間どもよ、かつての仲間を殺してみろ!」




