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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第二章 アルトの危機
23/71

23.守ると言うことは

「常世の(ことわり)に相反する魂よ、今ここに顕現し、我が(しもべ)となれ……蘇生(カースド・リ)呪術(ザレクション)

 へードルが言うと、彼の周りの土から、大量のアンデッドが這い出してきた。

「おい、お前が直々に戦うんじゃねえのかよ!」

「卑怯だぞ、自分は戦わないつもりか!?」

 こちら側から不満が飛ぶ。へードルはそれを気にも止めず、詠唱を続ける。

「さあ我が眷属たちよ、我の血となり肉となれ」

 アンデッドたちは、へードルの元へと歩き出した。

「魂よ、仮の依り代より移ろい、我が元へ……霊魂(カースド・)吸収(アブソーブ)

 へードルから黒い霧が吹き出し、アンデッドたちを包む。


 霧が晴れると、そこにはへードル1人しかいなかった。

 彼はアンデッドを吸収したのだ。

「ここら一体のすべての霊魂は全て我と一つになった。前よりいくばくかは強くなったろう。さあ愚かなる人間どもよ、我が眷属となるがいい」

「へっ、誰がてめえなんかに従うか」

「そうだ! 俺たちは断固戦うぞ!」

「うおおおおおっ!」

 防衛軍の士気は上々だ。なんか雰囲気がデモ隊だが……。


「打て! 高火力の魔術を打ち込むんだ!」

 ハンドンの合図に合わせ、俺たちは再び攻撃を再開する。

「荒れ狂え地獄の炎よ、我が敵をその紅き魂で燃やし尽くせ……地獄炎(インフェルノ)!」

「大地の神よ、空の神よ、その厖大なる力で敵に光の鉄槌を下したまえ……電光剣(ライトニングセイバー)!」

 へードルに、幾度目かの総攻撃が行われた。

 草原には火の手が上がり、火の海から煙は立ち上った。


 煙が晴れると、しかしそこにはへードルが悠然と立っていた。

「何だと!? この量なら、黒龍(ブラックドラゴン)も瞬殺だぞ!?」

「えーと、へードルのHP,MPは……!? 1割も削れていません!」

 日比野が言った。情報って、敵の残りHPとかまで分かるんだ。便利──。

「はっはっは。それで倒したつもりか? まあ、今まで破壊した都市の中で、最も力強い抵抗だったよ。では、貴様らの最後の言葉を聞こうとするかな」

「ふざけるな! こっちはまだ魔力がある! このまま根気良く魔法を打って、絶対にお前を殺すぞ!」

「まだやられたわけじゃねえぞ! 行くぞお前ら! 不死王(リッチー)を殺せ!」

 数人がへードルの方へと向かっていく。それは危険な気がするが……。


 突如へードルの持つ杖から黒い閃光が走り、彼らの胸を突いた。

 彼らは胸を押さえ、倒れる。

「っ、死んでます……。生体反応がありません」

 日比野が震える声で伝える。ハンドンは俯き、黙って手を合わせた。

「おいおい、これやべえぞ……。即死魔法か?」

「お、俺は逃げるぞ! 最初からそうすればよかったんだ!」

 防衛軍はざわめき始める。それをハンドンは鎮めた。

「みんな、聞いてくれ。彼は西エルフ国軍の長官、グラディウス。そしてこっちは、東エルフ国軍の長官、グローヌだ」

 ハンドンの両側にいる男が会釈した。


 グローヌが、へードルに呼びかける。

「少し時間を頂きたい。降伏するか戦うか、よく話し合って決めたいんだ」

「よかろう。少しばかりのハンデはくれてやろう」

 へードルが了承すると、俺たちは城門の中へ入り、大通りに丸く座った。

「まず、戦うか、それとも降伏し、町を明け渡すか。戦いたいものは通りのあちら側へ、そうでないものは反対へ動いてくれ」

 ハンドンが言うと、人々は左右に割れた。

 比率にして3:2といったところだろうか。少しだけ戦いたいと思っている人の方が多いようだ。

「そうか……。できれば私は、皆とこの町のために戦いたいと思っている。せっかく両エルフ国の支援があるのに、ここで我々が引き下がってはいけないと思うんだ」

 ハンドンは皆を説得する。

「でもよう、あんな強いやつ、今まで会ったことも、ましてや戦ったことなんてない。一瞬で殺されちまうよ」

「ああ、殺されないで済むなら、さっさと逃げようぜ。町のみんなはどこに避難してるのか知らないけど、新しい町なんてすぐに作れる」

 皆は弱音を吐く。その時。


「お前ら、それでも冒険者なのか? 今のお前らは、ちょっと強いだけのただの臆病者にしか見えんぞ」 

 泊が立ち上がり言った。それに続いて榎田も立ち上がる。

「そうよ、町の危機に、全てを賭けて戦うのが、あたしたち冒険者の役目じゃないの?」

 皆は顔を見合わせ、次第に決意したような表情になり、ついに頷き立ち上がった。

「そうだな、思えばこの町も、思い出深いものだ。それを捨ててしまうのは惜しいな」

「ああ、思えば20年前、パーティーを追放され、1人さまよっていた私を救ってくれたあの方、彼に連れられてやってきたこの町は──」

「はいはいじいさん、思い出話はいいから、さっさと城門へ行くぞ」

「じいさんとは何を言う、私はまだ現役の魔術師だぞ!」


 俺たちは、城門に再び並んだ。

「答えは出たか、聞かせたまえ」

 へードルの問いに、俺たちは口々に答える。

「へっ、命を捨てる覚悟はとっくにできた。貴様を差し違えてでも倒す!」

「てめえのおかげで、この町の思い出を思い出したよ。ありがとう……そして死ね!」

 へードルは一瞬顔をしかめ、そしてニヤリと笑った。

「それでこそ愚かなる人間……。面白い。では我も、本気で行かせてもらう」

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