19.吸血鬼が出ました
最近、どうも異変が多い。
悪魔が森に出たり、ヤマタノオロチが出たりと、モンスターが増えているのだ。
そして最近は、コウモリである。
夜な夜なコウモリの群れが町へ飛来し、布を食い荒らしたりしている。
この調子だと、吸血鬼まで出てくるかもしれない。
ということで、窓際に十字架と銀の杖を置いておいた。
「ギャッ」
夜、うめき声で目が覚めると、窓の外でコウモリが暴れ回っていた。
コウモリは苦しがり、上下左右に動き回っている。
どうやら、十字架が効いたらしい。
俺は窓を開け、杖を剣のように振り回す。
コウモリに当たると、悲鳴をあげて落ちていった。
俺は宿の外に出て、そこで白目を剥いて痙攣しているスーツの男を見つけた。
この世界でスーツの男にはいい思い出がない(森の悪魔回参照)ので、警戒しながら近づき、十字架を見せる。
男は動かなくなった。
部屋に運び込んだ男が目を覚ましたので、「お前はドラキュラだろう」というと、男はそうだと言った。
「その通り、私はドラキュラです。しっかし、私たちの弱点が十字架と銀だって、よく分かりましたね」
「いや、俺の生まれた地域で、そういう言い伝えがあってな。そんなことより、どうしてこの町に来たんだ」
「魔王様の命令ですよ。何でも、幹部も一目おく森の悪魔がやられたんで、池に魔王軍も倒しあぐねる怪物を潜ませたのですが、それも倒されたそうで。そこで私のご登場という訳です」
男は誇らしげに言った。どうやら、魔王軍の間で、このアルトはすっかり有名になってしまったらしい。
「はあ、さてどうしたもんかね……。とりあえず、コウモリを町にうろちょろさせるのはやめてくれないかね」
「やですよ、情報収集のために飛ばしているんだから。それじゃあ私はもう帰りますね」
「だめだ」
俺は窓から帰ろうとする不躾なドラキュラの肩に、銀の杖をポンとおいた。
とりあえず、コウモリを飛ばさないことと、町にあまりちょっかいをかけないことを、十字架を突きつけながら認めさせ、哀れなドラキュラは返してあげた。
しかし、ドラキュラはすぐに約束を破ったのである。
次の日、町の東から、膨大な数のコウモリが攻めてきたのだ。
俺たちは、ギルドに集められた。
「えー、このコウモリは、おそらく魔王軍の仕業でしょう。ドラキュラあたりが怪しいですね」
ギルドの人は言う。
「じゃあ、さっさとやっつけるか。コウモリくらい、どうってことない」
「いえいえ、あれに噛まれると、自分もドラキュラになってしまいます。気をつけてください」
「ひえ、やべえな」
皆は東に集まり、魔法を打ちまくる。
遠距離では圧倒的にこちらが有利で、あっという間にコウモリの半数以上が死んだ。
しかし、残りはどんどんと進んでくる。
「もっと魔法を打つんだ。近づかれたら終わりだぞ」
ハンドンは慌てている。俺も必死に魔法を打ちまくった。
数十分後、俺たちは何とかコウモリを全滅させることに成功した。
「明らかにモンスターが多すぎる。今後も、十分警戒してクエストにのぞんでくれ」
ハンドンは皆をねぎらいながら言った。
そして、その後アルトには恐ろしき敵が攻めてくることを、俺たちは知らなかった。




