18.池に大蛇が出ました
町は今日も穏やかである。
俺たちは、今日もクエストに行く。
今日は、町の西にある池に住み着いた、大蛇の討伐である。
なかなか手強い相手だが、しっかりと作戦を立てて挑めば、いける。
池に着いた。
未だ大蛇は現れないので、その間に作戦を立てることにする。
「やっぱり、誰かが引き付けて、そこを横から魔法で倒すのが一番だろ」
「だよな。しかし、引き付けるのは、かなりの危険があるぞ」
「大丈夫だろ、食われる前に仕留めればいい」
ということで、くじ引きの結果、衛士の芳賀が、囮役となった。
芳賀は池の淵に立ち、魔術師たちは、横の茂みに隠れる。
待機し始めてから30分後、ついに大蛇の頭が水面から出てきた。
芳賀は、それに向かってお尻をペンペンして煽り散らかす。
「ほーれほーれ、食えるもんなら食ってみな、ザコ蛇のモンスターめ」
大蛇は怒り、シャーシャーと声を上げる。
そして、芳賀を食うべく前進し、大蛇は全身を見せる。
8つの頭と、1つの尾を持つ怪物の真の姿を。
「ヤマタノオロチだああぁぁーっ!!」
芳賀は、一目散に逃げ出した。
「おいっ、早く魔法を、死んじまうよお!」
魔術師たちは、慌てて攻撃魔法を放つ。
しかし、全ては怪物の堅い鱗の前に無力だった。
ヤマタノオロチは、攻撃に気付き、その頭の1つを、こちらへともたげる。
大きく開いたその口からは、毒液の滴る1対の牙が見えた。
「うひゃあ、闇の攪乱!」
城戸が、目をくるくるさせながら、麻痺魔法を発動させた。
しかし、その効果が及んだのは、こちらへと向いた頭のみだった。
すぐに、他の頭が突っ込んでくる。
俺たちは急いで伏せ、それをかろうじて避ける。
「危ねえ、おい、あの化け物の弱点は何だ!?」
「えーっと、酒に弱いって!」
日本神話じゃねえか。
「酒って、そんなん誰も持ってねえよ、どうすんだ!?」
「仕方ない、一旦アルトに戻って、応援を呼ぼう!」
俺たちは、命からがら町へと逃げ戻った。
「おい、あの大蛇、頭が8つある化け物だったぞ、応援を頼む!」
「あいつは酒に弱い、ありったけの酒を持って行くんだ!」
ギルドにつくなり叫ぶ。こういうことはよくあるのか、ギルドにいた人たちの対応は早かった。
すぐに冒険者たちは飛び出し、ギルド併設の料理屋から、大きな樽に入った酒が提供された。
「ほ、ほうら、お前の好きな酒だぞ、たくさんお飲み……」
井川以下8名が、おっかなびっくり樽を転がしていく。
ヤマタノオロチは、池に戻り、こちらには気づいていない。
8人は、樽を立て、蓋を開ける。たちまちあたりはアルコール臭に覆われた。
「逃げろっ、オロチが来るぞ!」
8人は慌てて戻ってきた。すぐ後、ヤマタノオロチは水面から顔を覗かせた。
オロチは酒樽に気付き、喜んで飲み始める。
ヤマタノオロチはすっかり酔っ払った。
鳴き声は緩慢になり、たちまち頭を地面に下ろして眠り始めた。
「よし、今だ!首を切り落とせーっ!」
剣士たちが斬りかかり、たちまち全ての首が切り落とされた。
ヤマタノオロチは、日本神話の如く絶えた。




