17.悪魔公爵ヴァルトとの決着
町の中心に位置していた冒険者ギルド。
今や、周りもろとも消滅していた。
「どうしましたか、人間の皆さん。先程までの威勢は一体どこへやら」
ヴァルトは、天を仰いで、無力な人間たちを嗤っている。
「どうすればいいんだ……。魔法はすべて防がれた。もはや勝機はないのか……」
あちこちから、絶望の声が聞こえてくる。
「皆さん、今のうちに逃げることをお勧めします。私も、この町5万人と戦いたくはないし。あと15分以内に、この町の城壁を出てください。安心してください、町を破壊したりはしませんよ」
ヴァルトは提案する。多くの冒険者はそれに従い、町の人々を伴って外へ向かう。
「作戦会議するにしても、外でやった方がいい。みんな、町の外へ行こう。町の人たちも一緒に避難するんだ」
ハンドンは力なく指示する。俺たちは従い、城壁を出る。
「さて、作戦会議を始めよう」
切り株に座ったハンドンは、呼びかける。
俺たちは、町の西側の平原へと避難してきた。
今のところ、町に異変は確認されていない。
「作戦ねえ……。とりあえず、攻撃手段を確認するか。悪魔に強い魔法を使える人は?」
アーツが話すと、数人が手を挙げる。
「悪魔って邪悪な存在だよな。なら、俺の破魔殺陣が効くと思う」
「俺は神聖魔法は、使えるぞ」
「私も、祓魔系の魔法は得意だよ」
なるほど。こいつらを主戦力とするのが良さそうだな。
「じゃあ、悪魔の動きを止められる魔法を使えるものは?」
手を挙げるものは、いなかった。
「うーむ、じゃあ、物理的に動きを止める魔法は?」
ちらほらと手を挙げるものがいる。トラップ系の魔法だろう。
「なら、彼らを信じて、ありったけの動き封じをするのが最善か。まずは彼らを、町へ行かせよう」
「なら、俺が。透過」
井川が魔法をかける。魔術師たちは、たちまち見えなくなった。
その後、冒険者全員が透明化し、門から忍び込む。
ヴァルトは、藍色のスライムを集め、数を数えている。
山口の通信能力で合わせ、一斉に、動きを封じる魔法をかけた。
「鋼縄!」「氷結!」「地盤拘束!」「バインド!」「炎牢!」……。
ヴァルトを、一気に魔法が襲う。
「なっ、……うがっ!」
運良く、ヴァルトは引っかかり、拘束に成功した。
「我が魔力よ、神聖なる魔方陣を描き、魔の者を打ち砕け、破魔殺陣!」
「神の加護を受けし我が霊よ、その力を以て、不浄なる存在を光に貫け、神聖銀刃!」
そこに、町の強力な魔術師たちの攻撃は降り注いだ。
「うわあああああっ!!」
ヴァルトは悲鳴を上げる。徐々にその影が薄まっていく。
「くっ、こんなところで、この悪魔公爵ヴァルトが滅びる訳には……あああああっ!!」
ついに、町を蹂躙した悪魔は、亡びた。
戦いから1週間後。
町の復興作業は、石川の建築能力もあって、意外と早く進んだ。
すでに多くの住宅が建てられ、ギルドも、もとの姿を取り戻しつつあった。
今回のことに関しては、誰も責任は取らないこととなった。
泊の言う通り、冒険者としての責務を果たしただけだからということらしい。
さらに、悪魔との戦いへの貢献によって、うちのパーティー全ての人が一人前に認定された。
もう、全員で特殊クエストにも行けるし、全員で城壁を越えることもできる。
さて、今回の件で、国のアルトへの関心が高まった。
王都から王都防衛軍が派遣され、しばらくの間衛兵に加わってくれることとなった。
学者もやってきて、町に異変がないか調査をしている。
俺たちは、土木作業に従事していた。
異世界に来たての時を思い出す。あの頃も工事とかしてたな。
俺たちが泊まっていた宿も消滅したため、今は城壁に近い宿に泊まっている。
なんと、貯金箱は無事だった。
それからひと月後、町は完全な復興をみることとなった。
町は活気にあふれ、森は魔物にあふれている。
ギルドの掲示板にはクエストが所狭しと並べられ、冒険者たちは次々とギルドを飛び出す。
地球から転移して2ヶ月弱、なんだかんだでこの町、この世界にも愛着が湧いてきた。
その復興は、喜ばしいことだ。




