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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第二章 アルトの危機
16/71

16.アルト最大の危機

「はあ、はあ、はあ……。くそ、なかなかやりますね」

 霧が晴れると、ヴァルトは胸を押さえ、肩で息をしていた。

 よし、かなり体力を削った。あとはじっくりと追い詰めて……。


 しかし、ヴァルトはまたも立ち上がり、俺たちを嘲嗤う。

「だが、たった一度でいい気になるな。我が操る魔法は100種類以上。今度は何で戦うことにしましょうかね」

 ヴァルトから魔力が溢れ出す。悪魔公爵ともなればその魔力は俺の数倍を超えるだろう。


「これだ……氷牢(クリスタル・プリズン)

 地面から、氷が生えてくる。氷はたちまち俺たちの足を飲み込んだ。

盤弾(アース・バレット)

 辺りに散らばっていた、ガラスや瓦礫が浮き、俺たちに向かってくる。

「くそ、ウィンドシールド!」

 俺は、瓦礫を風で防ぎながら、火球を氷に当て、足を自由にする。


「ふう、やってくれたな、刀剣(ブレード・ジェ)生成(ネレーション )

 俺は剣を生成し、両手で構えた。

 他の皆も、次々と氷を溶かし、武器を構える。


「素晴らしい……では、そろそろ森の悪魔お得意の戦術を……大樹(ドリュアス)

 ギルドの屋根を突き破り、巨大な木が生える。

 ヴァルトは、生えてくる木の枝に素早く腰かけ、そのまま天空へと消えていった。

 上から、ヴァルトの声がした。

「では、捕え(エルファスト)る枝(・ツヴァイク)

 とたんに、大樹の枝がタコの足のように動き出す。

 枝は鋭く、回り込み、時にはゆっくり動き、俺らを翻弄する。

 切っても切ってもキリがない。ならば……。


火球(ファイアボール)

 枝に火をつけてみた。

 火は、枝の先から根元へと広がる。

 ん? これいけるか?

 まあそんなことはなく。たちまち火は枝に覆われて消えた。

 しかし、それを見た他の魔術師たちも、こぞって火を放つ。

 枝は次々と火に焼かれ、灰と化す。

 ついに、大樹の幹へと火が燃え移る。大樹は、たちまち火柱へと変貌した。

「な、何だ!? くそ、うわああ!!」

 上から悲鳴が聞こえる。まもなく、悪魔が空から落っこちてきた。

 彼は翼を広げるまでもなく、地面に激突する。


「はあ、はあ、はあ……人間にここまで苦戦するとは」

「はっ、そうだろう。人間様も強いんだぜ」

「木が燃えるって知らなかったのか、バカ悪魔め」

 冒険者たちは、ここぞとばかりにヴァルトを煽る。

 ヴァルトは、彼らを一瞥(いちべつ)したあと、おもむろに立ち上がり、ニヤリと笑った。


「しかし、人間ごときがこの悪魔公爵ヴァルトに敵う訳はない」

 ヴァルトは左手を高々と掲げ、その上に巨大な真紅の球を生じさせる。

「何だ? ……はっ、周りを囲め! 町へ被害を出すな!」

 ハンドンが叫んだ。俺たちは、慌ててヴァルトの周りを囲み、防御を張る。

 その瞬間。


 ドゴオォン!!


 轟音と共に、爆風と瓦礫の破片が高速で迫ってくる。

 俺たちは、それを必死で防ぐ。

 見ると、ヴァルトの周りには、紅い竜巻のような風が渦巻いていた。

 ヴァルトの笑い声が響く。爆風はさらに強まった。

「終わりだ……紅蓮の(クリムゾン・エ)終焉(ンドロール)


 その瞬間、視界が真っ白に染まる。



 目を開けると、辺りには何もなかった。

 目測で、半径500メートル以内の建物はすべて消滅した。

 辺りに残るのは、瓦礫と煤。

 その爆心に、ヴァルトは笑みを浮かべて立っていた。

「ははは、はっはっはっは。やはりこの悪魔公爵に敵うものなどいない」

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