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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第二章 アルトの危機
14/72

14.黒服の悪魔

 殺される。俺は潔く目を閉じた。やるなら一思いに──。

 ああ、異世界での生活、楽しかったなあ。


「ああちょっと、怖がらなくてもよいのに」

 悪魔が優しく語りかけてきた。

「まあ、そんな茂みの中じゃ何ですから、ちょっと出てきて下さいよ」

 逆らうわけにもいかず、俺らは茂みから出てきた。


「では、自己紹介をしましょう。我が名はヴァルト、この森を統べる公爵」

 ほらね。強いやつだ。

「あ、えーっと、井川翔って言います。アルトで冒険者をしております」

 井川に続き、皆自己紹介をした。

「なるほど。お会いできて光栄です。皆さん、オーガの軍団を倒した方々でしょう」

「ああそうですけど……。なぜそれを?」

「なに、私も魔王軍のはしくれ、それくらい知っていますよ」

 清水の問いに、ヴァルトは答えた。


「魔王軍ねぇ、一体どうしてこんな森で?」

 清水は質問を重ねる。

「ふむ。まあ答えてもよいでしょう。端的にいえば、魔王の命で、偵察に来たのです。私の魔力で、あたりのモンスターが逃げ出し、人々に気づかれてしまったのは計算外でしたが……」

「なるほど。じゃああのスライムも、偵察用ということですか?」

「そうです。私にはできない仕事、例えば町に侵入したりとかね。それをやらせているのです」


 さっきから、ヴァルトは魔王軍の秘密情報をべらべらと喋っている。

 まさか、殺すつもりじゃなかろうな?

「いえいえ、カンザキさん。私はあくまでも人間とは友好的に接したいと考えていますよ」

「っ!? ──心が、読まれ……」

「当然です。我々悪魔族の食すもの、それは人間の心です。心が読めなければ飢えて死んでしまいます」

 ヴァルトによると、悪魔は人間の感情や、死後の魂を食って生きているらしい。

 といっても、神々との契約で、魂は罪人のものしか食べてはいけないことになっているそう。

 まあ、悪いことをしなければ、死後は安心できるということだ。


「さて。私があなたたちを探していたのは、とある理由からです」

「理由……。一体何ですか?」

「お恥ずかしいことですが……、スライムの飼い慣らしかたです」

「「はぁ?」」


 ヴァルト曰く、この藍色のスライムたち、仕事は忠実にこなすのだが、休暇中に消えたり、変なものを食べてきたり、人間にちょっかいをかけたりと、なかなか統制が取れていないらしい。

 そこに、オーガとの戦いで、スライムを使いこなして戦う女性(榎田だな)を見て、彼女に教えを乞おうとしたらしい。


「んー、彼女がスライムを使役できているのは、彼女の魔物使い(テイマー)という能力由来なので、厳しいかと……」

 俺がそういうと、ヴァルトは残念そうに引き下がった。

「ふむ、そうですか。能力……。ということは転生者? いや、似た雰囲気のものがこんなに……。 っ、あの忌々しい老神め、また送り込んできたのか」

 ヴァルトは、紳士っぽくなく悪態をつく。が、すぐ我に返った。

「おっと、お見苦しいところを、すみません。では、私はこれで。おっと、大事なことを忘れていました」


 ヴァルトは、ひっくり返ってばたばたしているすまいむをつまみ上げると、右手の指先をすまいむに向ける。

「あ、ちょっと、藍色のスライムに変えようなんて、やめて下さいよ」

「ああいえ、違います。このスライムに、うちのスライムたちと敵対しないように魔法をかけるのです」

「まあ、それくらいならいいですけど……」

 ヴァルトが古代語で呪文を唱えると、すまいむの周りに紫色のベールがかかり、消え去った。


「ふう、これでいいでしょう。ではさようなら。ああそれと皆さん、私のことをギルドに話すことはお勧めしませんよ」

 ヴァルトは怪しげな目で呟き、飛び去っていった。


 俺たちは、その後ギルドへ帰ってきた。

「お疲れ様でした。それで、何か収穫はありましたか?」

 さて、どうしよう。冒険者として、話さないのは気が咎める。しかし、最後にヴァルトが残した言葉が気になるのだ。


「ええっとですね、まず獣道を列になって進む大量の藍色のスライムが……」

「あっ、ちょっと──」


 止める間もなく、泊があらいざらいギルドの人に話していた。

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