13.森がおかしいです
魔王軍を撃退してから1週間後。
このところ、何かがおかしい──。
何かというと、森のモンスターが異常に減っているのだ。
ケルベロスにも出会わないし、スライム1匹すらいない。
おかげで、クエストが少なく、俺らは最近貧乏である。
100万越えの貯金は、崩せないのだ。
あまりに異常なので、ギルドが特別クエストを作った。
森を探索し、強力なモンスターや、異常現象の兆候を見つけたら、報酬が出るそうだ。
おいしいクエストなので、貧乏パーティーがこぞって参加している。
「えーっと、あなたたちのうち17人は、仮冒険者のため参加できません。そちらの5人は行けますが……」
ギルドの人は、申し訳なさそうに首を振る。
そういえば、特別クエストに参加できるのは、一般冒険者以上だったな。
「えー、そこを何とかぁ」
榎田がギルドの人の襟首を摑み、前後に振っている。見た目ただのカツアゲだが……。
「無理です、規則ですのでぇ〜〜!?」
ギルドの人は必死に抵抗している。流石に可哀想になってきた。
「じゃあ、俺ら5人だけで行きます」
榎田を引き剥がし、俺はギルドの人にそう告げた。
「はあ、分かりました。じゃあこちらにサインを」
俺は契約書にサインをし、4人とともに森へ向かった。
森は、静寂に包まれていた。
「ふーん、確かに何もいねえな」
井川が周りを見渡しながら言う。
「おかしいねぇ、虫の鳴き声すらない」
芹沢も不思議がっている。
「おい、ありゃなんだ?」
泊が前を指差す。
獣道が交わっているそこには、スライムの行列があった。
不思議なことに、スライムは藍色をしている。
右から左へと、整然と飛び跳ねて移動している。
「軍隊みてえだな」
泊は頭を掻きながら言った。確かに整然と行進するその様子は、訓練された軍隊だ。
「なんか怖えぞ、早く帰ってギルドに報告しようぜ」
清水が踵を返す。その瞬間──。
俺の懐から小さい球体が飛び出した。
すまいむだ。
同族嫌悪というやつなのだろうか。すまいむは列を睨み、今にも飛び出しそうだ。
っていうか、なぜすまいむが俺の懐に?
と思っていると、地面にすまいむが飛び出す時に懐から落ちたらしい紙を見つけた。
拾い上げて読んでみると……。
神埼君へ
すまいむは連れていっていいみたいだから、持ってって
きっと役に立つよ 城戸&榎田
何てこった。そのすまいむが今、敵陣に突っ込んでいきそうなんだが?
あっ──。
止める間もなく、すまいむは藍色のスライム軍団に特攻していった。
まずい、バレる。俺は4人を促し、茂みに隠れる。
すまいむは、藍色のスライムと激しい戦闘を繰り広げていた。
具体的には、ぴょんぴょん跳ねて、ぶつかり合っていた。
ぴょんと飛び、敵に体当たりする。
両方ぷるぷるなので、跳ね返される。
その繰り返し。かわいい戦いだ。
っと、かわいがっている場合ではない。
さっさとすまいむを連れて、ギルドへ向かわなくては。
もたもたしていると、軍隊の主が現れる。
その時、俺らの頭上を大きな影が通った。
その影は、交差点にひらりと着地する。
影の正体は、黒服に身を包み、背中から羽が生えた男であった。
まるで悪魔のよう。いや、おそらく悪魔そのものだ。
悪魔は、戦っている藍色のスライムたちを制止し、ひょいとすまいむをつまみ上げた。
さらばすまいむ。R.I.P──。
と思ったら、悪魔は、すまいむを興味なさげに放り投げた。
そして、周りを見渡し、きょろきょろと何かを探している。
っ──。 俺らを探している。
見つかったらおしまいだ。俺らは息を殺し、目を閉じる。
どれくらいの時間が経っただろうか。
もう行っただろう。俺は目を開け、上の方へと視線をやった。
黒服の悪魔が、俺と目を合わせた。




