表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第八章 北国
106/106

106.不思議な人たち

「……えーと、どちら様ですか?」

 俺は初対面の人との会話が苦手だ。

 異世界に来て多少は緩和されたが、やはり慣れないものだ。

 仕事上仕方なくといったものでないなら、なおさらだ。

「私はエリー・テイラー、この町で冒険者をやっている者よ」

 フードを被っていた時の印象とは裏腹に、その口調には自信が満ちていた。


「で、その冒険者さんが何か用です?」

「別に、何もないわよ。ただいい雰囲気の店を見つけて入ってみたら、あなたがいただけ。

 今日も来たのも、ここの料理が気に入ったからよ」

 金髪を指でいじくりながら、エリーは淡々と語る。

「それは、ありがたいことですね。これからもどうぞご愛顧のほどを」

 店主も、店を褒められごきげんのようす。


 今日も店内には誰もいないのに、エリーは俺の隣のカウンターに腰掛ける。

「ねえあなた、防衛隊の副隊長さんよね」

 町で子供に話しかけられることも増えてきた、新進気鋭の副隊長でございますよ。

 まあ、冒険者ならば顔や名前は知っていて当然か。

「見たところまだ12、3歳くらいよね。そんな若いのにすごいわ。

 もしかしたら、数年もすれば王都行きかもしれないわね」

「まさか。そんな大した人間じゃないです」

「そんなに謙遜するものじゃないわ。自分に自信を持って」

 先生みたいなことを言い出し始めたエリーをあしらいながら、料理を急いで平らげ、宿へ逃げ戻った。


「……てことがあってな」

「ふーん。で、そのエリーってやつは誰なんだ?」

「さあな。ま、怪しい人じゃなかっただけよかったよ」

 エリーがうるさくてろくに休めなかったので、ロビーでその辺で買ってきたらしき弁当を堂々と食っている井川に、愚痴がてら相談することにした。

「そうか。ま、このことは忘れるのが1番だ。

 ……ん? これが欲しいのか? はいどうぞ」

 井川が、物欲しげに弁当を眺め始めた小さい子供に、何かを渡そうとする。

 お前も意外といい奴なんだな。

 って……。


「お前、自分の嫌いなニンジン押し付けようとしてるだろ」

「うっ」

 嫌がる井川の口に無理やりニンジンを押し込んだ後、俺はさっさかと眠った。



 いつものようにギルドに向かう途中。

「あ、副隊長さんよ!」

「ねえ、早く行きなさいよ」

「え〜、無理だよ〜」

 後ろが何やら騒がしい。

 突然、「あのー……」と遠慮がちな声とともに、肩が叩かれた。


「誰です? 何の用ですか?」

 振り返ると、目をキラキラさせた、同年齢くらいの女性が3人。

「大ファンなんです、サインください!」

「サイン? ……まあ、いいが」

 色紙を受け取り、日本語で『かんざきしぐれ』と綴った。


「ん? これ、何て読むんですか?」

「俺の故郷の言語で、俺の名前だ」

「副隊長さんの故郷……。いつか、言ってみたいなぁ」

「行くなら自分で金を貯めることだな。

 ……ところで、エリーって奴、知ってるか?」

 思いつきで聞いてみたのだが、女子たちは顔を見合わせた後、何やらキャーキャーと騒ぎ始める。

「エリーちゃんと何があったんですか?」

「いや、飯食ってたら会ってな。妙な奴だったんで、気になってたんだよ」

「あいつ、一人で抜け駆けしたな!」

「帰ってきたらとっちめてやる!」


「……って言ってたんで、気をつけた方がいいですよ」

「あ、ああ……。そう? ……何だか今の話だとあなたが火種を撒いていた気がするんだけど……」

 エリーは、何だか知らんが大人びて見える。

 あの女子たちが知っているということは、そこまで歳が離れているわけではなさそうだが。

「ちなみに、あなた何歳なんです?」

「25よ。あなたが言ってた子たちは、私の弟子ね」

 フード被ってた時は子供っぽく見えたが、俺も観察眼を鍛えた方がいいかな。

「弟子? 武術か何かのか?」

「『カンザキさんを落とす会』っていうのがあって。そこでみんな切磋琢磨しながら頑張ってるのよ」

 え? 俺どこから落とされんの? 崖?


「……っていうことがあってな」

「最近俺にばっか相談するなお前。

 ……うらやまし」

「何がだよ。いつ突き落とされるか分からない恐怖、味わったことないだろ」

「そういうことじゃねえんだよ。……まあいい、後ろに気をつけて過ごせよ」

「他人事みたいに言うなぁ」

 やっぱり、最近俺の周囲で陰謀が渦巻いている気がするんだよなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ