10.この世界もいろいろ大変です
ギルドに出かけ、クエストをこなしまくり、金を貯めること2週間。
貯金額は、300000カランの大台に乗った。
今では、宿代も自分たちで調達できている。
また、皆のレベルも上がり、中には2桁になった人もいる。
俺はレベル7。まだ半人前だが、そこら辺のモンスターは、1人で倒せる。
なんだかんだ言って、異世界での生活も軌道に乗ってきた。
今日は、初めての討伐クエストを受ける予定だ。
今までは、雑用みたいなことばかりやっていたが、ようやく冒険者っぽい仕事ができる。
わくわくしながら、宿のドアを開ける。
その瞬間──。
「魔王軍襲撃! 冒険者は直ちにギルドへ集まってください!」
町中にある魔法連絡装置から声が響いてきた。
「魔王軍? 何で?」
「まあ、とりあえず行こうぜ。俺ら冒険者だしさ」
ギルドへ向かうと、そこには数百人の冒険者たちが集合していた。
「えー、今回の魔王軍の構成は、亡霊や不死者が中心で、規模は1000匹ほどと見られます」
「なるほど。我々も舐められたものだな」
ギルドの人の説明に、冒険者たちはそう言った。
「え? 1000匹て、結構多い気がするんですけど……」
「いやいや、亡霊や不死者は弱い。あいつらは数が頼りだからな。強さは人間の数分の1くらいだろう」
人間に換算すれば、数百人ということか。確かに、人口5万以上の都市を攻めるのには、少ないといえる。
「えー、魔王軍は、町の東側の平原から攻めてきています。皆さん、城壁の東門に集まってください」
確かに、ギルドの人も、あまり緊張してはいないようだ。
東門にて。
目をこらして見れば、確かに人だかりがこちらへ向かってきている。
正確には人ではないが……。
「よし、魔法でちゃちゃっとやっつけちゃいますか!」
皆、初めて魔法が使えそうなので興奮しているようだ。
クエストのすきま時間に、その辺の冒険者に頼んで魔法を教えてもらっていたのだ。
スライムとか小さなモンスターはよく狩っていたから、経験値もある。
町は、魔法を覚えるのに最適の環境である。
この世界の魔法の仕組みもよくわかってきた。
まずこれは他の職業にも言えることだが、「水」と「炎」の2大属性がある。
冒険者は、どちらかを選び、自身の属性とする。
水に分類されるのは、水、土、光、木。
炎に分類されるのは、炎、風、闇、鋼。
自身の属性に分類されるものしか、覚えることはできない。
俺は炎を選択した。なんとなくかっこいいからだ。
また、この世界の魔法は、組み合わせができる。
魔法は、組み合わせて使うと、威力が上昇する。
組み合わせによっては、上級魔法に匹敵する威力を出すこともある。
うまく作れれば、上級魔法よりMPの消費を抑えつつ、高火力で敵を薙ぎ倒すことができる。
さらには、魔力を直接体や武器に纏わせることもできる。
魔力を纏わせると、身軽になったり、攻撃や防御が上昇するらしい。
俺は魔法使いなので、あまり関係はないが……。
「みんな、もうすぐ敵が来るぞ。魔術師たちは、魔法の用意を。衛士たちも、警戒を忘れるなよ」
町の防衛軍の隊長、ハンドンはテキパキと指示を出している。
俺は、炎魔法と闇魔法の合成魔法、「不知火」(俺命名)の発動を準備する。
この魔法、あのパーティーの魔法使い、レインが認めた強さだ。
体が熱くなる。周りの空気に、魔力がとけだしている証拠だ。
敵陣へと伸ばした手の先に、濃い赤の球が出現する。
指示があればすぐにでも、黒い炎が不死者を殺す。
「攻撃!魔法を撃てー!」
ハンドンの声とほぼ同時に、俺は叫んだ。
「『不知火』っ!」
手の先の球から、黒い火の玉が次々に飛び出す。
それらは拡散し、敵陣に突っ込んでいく。
敵陣には、他にもさまざまな魔法攻撃が降り注いでいた。
一瞬にして、草原は火の海と化した。
見ても、もう生き物の影はない。
「撃退を確認! 水魔法で鎮火を!」
俺は「不知火」を停止する。俺としては上出来だったと思う。
その時──。
ドスンと大きな地響きがした。
地震か? そう思うが、すぐにそれは間違いと悟る。
草原の向こう、水蒸気の霧を切り裂いて、巨大な鬼が数十頭現れたのだ。




