表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お姫様は愛する王子様を幸せにする  作者: 木蓮
<表>銀色のお姫様は愛する王子様を幸せにする
8/26

サラフィーア 4

 ……呪いの主はトラオムのお母様。亡き側妃様であるサクヤ様です。

 サクヤ様は陛下と一目で恋に落ち、周りの反対を押し切った陛下によって側妃として迎えられました。

 彼女は幼い頃から自らの”伴侶”の陛下と仲むつまじく過ごしていた叔母様を”アクヤクレイジョウ”と呼んで敵視し「女神が決めた縁で無理強いした王妃とは違って、心から愛している自分がトールを幸せにしてあげる」と陛下に執着していたそうです。


 ……しかし、彼女は唯一愛した陛下にすべての愛情を注ぎ、他のモノにはわずかたりとも愛情を向けようとしませんでした。

 自分が望んで産んだ息子すらもです。見た目だけは陛下にそっくりなトラオムは生まれてから1度も母に名前を呼ばれることはおろか存在すら認められず。父の名”トール”と呼ばれ、陛下の身代わりとして扱われていました。


 自らの欲望のままに残酷な行いをする彼女を優しい女神様は許さなかったのか、彼女には厳しい罰が下りました。

 陛下はトラオムが産まれると突然まるでサクヤ様を忘れたように無関心になり、出産で衰弱したサクヤ様を”療養”として離宮へ閉じ込めました。赤子のトラオムは叔母様が引き取って我が子と一緒に育てました。

 陛下に見捨てられて心も身体も病んだサクヤ様は、1年前に亡くなるまで離宮で来ない陛下(トール)の訪れを待ちつづけ、恨みと寂しさを募らせる孤独な日々を過ごしていました。

 人々はサクヤ様を”女神様の怒りをかって罰された罪人”だと疎み、一切の関わりを拒みました。


 そんな中、唯一トラオムだけは”務め”と称して母親の元へ通い続けました。そして、そのたびに”トール”として扱われることに深く傷ついて帰ってきました。

 私はトラオムに何1つ与えないくせに、彼の優しさを当たり前のように奪う彼女が憎くてたまりませんでした。幼い頃から「トーラに近づかないで!」と、最愛の”伴侶”を奪われて深く傷ついた叔母様の分まで思いっきりひっぱたいてやりたいと何度思ったことか。


 でも、トラオムは私がサクヤ様に会うことだけは絶対に許してくれませんでした。そして、嫉妬にかられた私が


「トラオムは私の大好きなトーラで、私たちスペクルム家の大事な家族なの!! あんなひどい人にトーラの心は渡さないわ!」


 と怒ると、トラオムは


「ありがとう、サフィ。僕もこんなにもたくさんの幸せをくれたサフィとスペクルムの皆が大好きだよ。それに、サフィの隣りが僕が生きる場所だから、母上の元から無事に帰ってこられるんだ」


 と、うれしそうに笑うので。私はいつも王宮のトラオムの部屋で彼を見送って無事の帰りを待っていました。

 ……そして1年前。我が家に婿入りするトラオムは「母上に最後の別れを告げて来るよ」と、いつものように私に声をかけて出かけ。


 ――おぞましい呪いになったサクヤ様に捕らわれてしまいました。


 私はいつまでもトラオムの心を支配するサクヤ様を嫌っていましたが。彼女もまた陛下の妻である叔母様にそっくりな容姿をして、初めて出会った時の陛下と生き写しのトラオムを奪う私を激しく憎んでいました。

 呪いになってトラオムにとりついた彼女は身体を操って私を憎しみと狂気で切り刻み、幾度となく殺そうとしてきました。

 こんな人は私の”トーラ”ではないとわかっていても。彼の顔と声で憎しみと侮辱の言葉をぶつけられ、わずかでも弱みを見せると傷をえぐられ。

 私の心はすり減っていき、神具を扱う修行が忙しいと言ってトラオムから逃げるようになりました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ