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お姫様は愛する王子様を幸せにする  作者: 木蓮
<裏>銀色の王子様は愛の結末を見届ける

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アルセイン 7

 それから”ニホンジン”の少女はサラフィーアに連れられて”呪い”に会いに行くようになった。

 見目麗しい男を好む少女は今度はトラオムをたぶらかそうとしているらしく、サラフィーアが嫉妬するのを嘲笑っているらしい。……あの少女、”呪い”よりも性質が悪いんだが。

 殺気立つサラフィーアをなだめ暴走する少女をやんわりと諫め。ギスギスする女性たちに囲まれた僕が胃痛に悩まされていると、ようやく母上から“呪い”を排除する許しが出た。


 母上曰く、サラフィーアの限界ギリギリの我慢のおかげで”呪い”はあの”ニホンジン”の少女をいたく気に入ったらしく、トラオムから離れることもあるという。

 そのため「陛下が会いに来る」と言って”呪い”を油断させて引き剥がし、隙をついて神官長様の協力の元で僕が神具で弱らせて、少女に”呪い”を封印することに決まった。

 サラフィーアはようやくトラオムを助けられることに安堵と不安を感じて緊張していたが。僕が「よろしく頼むよ”相棒”」と幼い頃にトラオムに言っていた言葉をかけるとやっと笑顔を見せた。


 そして迎えた当日。神具の杖を隠し持ち硬い笑みを浮かべたサラフィーアと何も知らない少女がいつものように離宮に入った。

 しばらくしてからサラフィーアから合図があり、神官長様と神具の槍を持った僕は静かに踏み入った

 人払いがされた離宮は静まり返っていていっそ不気味なほどだ。隠ぺい魔術をかけているとはいえ少しでも”呪い”に気取られないように気配を殺して進んでいくと、トラオムの部屋から悲鳴が響いてきた。


 僕と神官長様が部屋に駆けこむと、そこには強ばった顔で神具の杖を構えるサラフィーアと戸惑う少女、そしてなぜいるのか怒り狂う”呪い”と対峙する母上とその隣でうなだれる陛下がいた。


「嘘だ、嘘だ嘘だあっ!! 私の”トール”がおまえのはずがない!! ユミトルーナっ、おまえがトールを奪って隠したんだろう!! トールは私のモノ、私が幸せにするんだっ!! トールを返せええっっ」

「ふふふっ、無様ね。ここまでやってあげたのに本物とまがい物がわからないなんて。まあ、仕方ないわ。あなたが言う”愛する人”とやらはしょせんあなたの頭の中にしか存在しない妄想だもの。あなたが手に入れたと自慢しているその”トール”も私が用意したただのレプリカ、何の価値もないわ。ふふふふふっ、あっははははは!」

「黙れええええっ!!」


 紫の瞳に憎しみと狂気を宿した母上がサクヤを嘲笑うと、激高した”呪い”は長い黒髪の少女の形をとってトラオムの身体から離れて母上に襲いかかった。神官長様が素早く結界を張って母上と陛下を守ると、すかさずサラフィーアが神具を振るった。

 すると、糸が切れたようにトラオムの身体が崩れ落ち「トーラ!」と叫んだサラフィーアが受け止めて一緒に床に座り込む。僕が2人を守るように立ち塞がるとこちらに気づいた”呪い”は見ているだけで心が蝕まれそうな形相で僕たちをにらみつけた。


「ユミトルーナ!! おまえにだけはトールは渡さない!」

「ふざけんなっ、この勘違いバカ女がっ! 僕たちはトールでもユミトルーナでもない、ただの他人だ!! 復讐だか逆恨みだかなんだか知らないけど、ケンカは本人たちだけでやれっ!! 僕の弟といとこにいつまでもつきまといやがって迷惑なんだよっ!!」


 こちらに襲いかかろうとする”呪い”を魔力をこめた神具の槍のリーチを活かして羽虫よろしく打ち払うと、効果があるらしく”呪い”は悔し気に僕をにらみつけ、ふと離れたところに立っている少女を見た。

 そして立ち尽くしていた少女にすんなりととりつき憎悪に歪んだ顔でこちらをにらみつけた。

 ……どうやら思っていた以上に厄介なことになりそうだ。僕は恐怖で顔を青ざめさせながらも必死にトラオムを守ろうと抱きしめるサラフィーアに声をかけた。


「サラ、よくがんばったっ。後は任せろ! 何があってもその神具と愛情があれば大丈夫だ、トラオムから離れるなよ!!」

「アル……っ」


 僕は少女の身体を操って迫ってくる”呪い”を思いっきり打ち払うと、くしゃりと顔を歪めながらも僕を心配するサラフィーアとトラオムを転移させた。それを見た”呪い”は悲痛な声で「トール!」「トラオム」と2つの名前を呼んだ。


 ……この少女は思ったよりも”呪い”との相性がいいのかもしれない。

 僕は完全に意識がのっとられたのか、魔獣のように殺意のこもったぎらついた目を向ける少女に命の危険を感じて、冷たい汗が背を流れるのを感じた。

 さすがに神具に大量の魔力を持ってかれた上に転移魔術まで使ったのはきつい。魔力がなくなって身体が川底に沈められたように重だるい。

 でも、何があってもこの人の人生を食い荒らす憎たらしい呪い”に、死ぬほど痛い一撃を食らわしてやる。僕は鉄の塊のように重い槍を構えた。

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