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時計仕掛けの転移恋歌  作者: Kanra
第一章 事件への序曲
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第8話 夜の実験の出来事

 先述の通り、エレナは人工知能を搭載したコンピューターによる子育ては可能かと言う実験の被験体だ。

 両親の居ないエレナにとって、AILというのはただ一つの家族のような存在である。


 だが、AILは所詮、コンピューター。

 人間にあって、コンピューターには無い物。


 それが原因か、エレナと話す者の多くは「コンピューターと会話しているようだ」と言う。


 基本的には同じようなトーンで、無機質な話し方をするエレナもまた、人と話すことが苦手である。ミサと言う女子と付き合うのもかなり難儀していた。だが、それも、AILのサポートもあってどうにか熟せていた。


 今日は放課後、アルバイトがある。

 学校近くの靴屋での仕事だ。

 与えられた仕事を淡々と熟すが、やはり、接客の際、客は「自分は機械と話しているのか?」と錯覚する。


 バイトが終わると、駅前のファストフード店に入る。

 機械で作られたハンバーガーとポテトとジュースを、これまた機械から受け取るだけ。この辺りの食堂の殆どがそうだ。


 ミサと行った回転寿司屋だって、タブレット端末に注文を打ち込み、機械が寿司を作って、レールに乗って寿司が運ばれてくるのだし、学校の学食も同様に、機械が作った無機質なディストピア飯が殆どだ。

 機械が作った夕食を食べ終えると、住まいのガレージに停車している車に乗る。この車は、AIL10000型コンピューターを搭載し、完全自立航行、電子制御装置を兼ね備えた次世代自動車の試作機だ。一応、ナンバー登録もされていて、公道を走る事は出来るので、今夜は大学キャンパスから駅まで走ってみることにした。


 タブレット端末のAILを携行し、町へ出て行く。


 駅までの往路はエレナ自身が運転し、駅から住まいまでは、AILによる自動運転という少々踏み込んだ事を行ってみた。夜で交通量も少なかった事もあってか、なんら問題は無く走ることが出来た。問題は、昼間の交通量の多い時間帯だ。


(これに関しては、今週末の最高速実験の後だ。)


 と、思うが、住まいに着く直前。AILが車の発電機から過剰電流を受け取っているという警告が出た。


「おっと?」


 と、エレナは安全な所で車を停めて、エンジンをリスタートさせる。

 すると、今度は左後輪がパンクしたという警告が出た。

 だが、点検してみたがパンクはしていない。


「週末の実験時に糸川教授に報告する。」


 と、エレナはAILに告げる。


「回路を切る。そう言うのですか?」

「違う。ただ、何か変だとは言うがな。」

「エレナ。私は至って正常です。」

「なら、パンクしていないタイヤをパンクしたと報告したのは、どう説明する?」


 AILは咳払いのような間を空けてから、


「路面の凹凸の振動を、パンクと勘違いしたようです。実験道路に凹凸は無かったので。」


 と答えた。


「分かった。では、そう、糸川教授に報告するよ。」


 と、エレナは言った。


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