第6話 異様な雰囲気
翌朝。
AILは通常通りに稼働していた。
学校に行く日のアラーム音は正常に作動し、ディストピア飯の朝食も正常に供給された。
「今日の授業で使うテキスト類のチェックリストです。」
と、AILは今日の授業で必要な物のチェックリストをディスプレイに表示。
エレナはその全ての項目を確認。
「課題も全て終了しておりますね。」
「ああ。全部。」
その時、キッチンの流し台の電球が突如点灯したと思ったら消えた。電球が切れたのだ。しかし、電球を点けた覚えはない。
「流し元灯が切れたようですね。」
「点灯させた覚えはないが―。」
「過剰電流が流れたのでしょう。」
「発電機は?」
「正常です。」
「なら、いいのだが。」
「やはり不安ですか?」
「いや、なんでもない。行ってくる。」
エレナは学校へ向け出発する。
懐にはAILのタブレット端末を持っている。何かあっても対処できるだろう。
だが、学校に着いてみて異変に気付いた。
エレナに対し、敵視するような視線が飛んでくるのだ。
いつもは感じなかったが、今日は異常だ。
「アイル。何か変だ。」
と、トイレでAILのタブレット端末に話す。
「何がですか?」
「周囲の視線が変だ。」
「私はタブレット故に、それを感じることは出来ません。」
「何かあったら、対処を頼むよ。」
「分かりました。では、端末に空想科学小説を表示します。それを朝のホームルームまでの間、読んでいるとよい。その状態なら、私でも、視線がどうなっているのかを観測できます。」
トイレを出て教室に入り、AILに言われた通り、タブレット端末に表示された
空想科学小説を読みながら、AILに状況の分析を行わせる。
(確かに変ですね。あのうるさいミサの姿もありますが、主にミサの周囲から異様な雰囲気を感じます。)
と、タブレット端末に表示された。
エレナはキーボードを端末に表示し、キーボード入力によって、AILと会話する。
「なぜミサが?」
(分かりません。思い当たる節があるとすれば、土曜日の件でしょうか?)
「あれはミサの自業自得であって、こちらに非は無いだろう。」
(はい。ミスがあるとするなら、ミサ側です。)
と、AILが表示したとき、ミサとその一味がエレナに寄って来るのが見えた。