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時計仕掛けの転移恋歌  作者: Kanra
第六章 未来への選択
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第52話 鬼怒川の夜

 大浴場から部屋に戻る際、エレナとリオナは浴衣を着ていた。

 エレナは初めて着る浴衣に戸惑ったが、実際に浴衣を着てリオナと並んで歩くと、様になっているように感じた。


「准尉クラスという、下位クラスの中で一番上のクラスの、この部屋から上のクラスは、部屋食か広間での夕食かを選択出来、下位クラスは広間になります。」


 と、リオナは夕食の話をする。


 大浴場から部屋までの間に、小さいながら娯楽場もあり、少々遊んでいこうと言うので、エレナはリオナに付き合い、撞球場に入って1回ゲームをする。リオナとゲームをして勝てた事が無かったが、今回はかなり白熱し、最終的にエレナが勝った。


 ミサの時、エレナが機械的に勝つと、ミサは不平不満と罵詈雑言を浴びせて来たが、リオナは「悔しいです!今度は負けません!」と頬を膨らましただけだった。

 エレナもミサと違って、機械的に勝ったのではなく、リオナとの大接戦になった上で勝ったため、かなり充実感と言う物を得ていたし、何より笑いが絶えなかった。


 部屋で、夕食を堪能した時も、エレナとリオナは絶えず笑い合い、エレナはその際、前の世界で付き合っていた「ミサ」と言う女の話をしたが、リオナは嫌な顔せず聞いてくれた。


「随分と勝手な人ですね」と、ミサを批判したが、その時も笑っていた。


 食事を終えて、食器を下げて貰うとき、ちょうど部屋の半露天風呂に温泉を引き込んで入り頃になった。


 入る前に、布団を二人で敷くが、この時もリオナとエレナで自分たちの布団を敷いていた。


「では―。」


 と、リオナはスルスルと浴衣を脱いでしまう。エレナは直視出来ないでいたため、冷蔵庫から、リオナの買った物と、自分が買った物を引っ張り出しに向かう。


「ああ、ありがとう。では、エレナも―。」


 と、リオナはエレナの浴衣に手を伸ばす。


「ちょっ―。」

「ああ、ダメですよ。私だけが一人お風呂でお酒では、エレナも一緒に入ってくださいな。」

「でも―。」

「前にお風呂に入り込んで来て今更恥ずかしいのですか?」


 リオナがニヤリと笑った。

 結局、リオナに押し切られて、エレナも一緒に入るハメになった。


「さぁて。」


 と、リオナは桶に入れて浮かべたワンカップ酒を、冷や奴を肴に嗜んでいる。

 その横で、エレナはスナック菓子とオレンジジュース。

 これでは、年の離れた姉弟だ。


「あぁ、この時間が溜まりません。」


 リオナは夢見心地だ。


「あの―。」


 と、エレナは口を開く。


「なんれしょう?」

「呂律回らなくなる前に言わせてください。自分は、リオナさんが好きです。」

「あらぁ?」

「なので、元居た世界に戻りたくないです。リオナさんと一緒に、星空を眺めながら、この世界で生きていきたいのです。自分自身の勝手な事ですが―。」

「フフフフッ」


 リオナは微笑む。


「私も、エレナが元居た世界に戻る事は嫌れすねぇ。私も、同じ事を思いまふ。」

「でっでは―。」

「ただし、条件があります。」

「条件?」


 酔いが回りつつあったように見えたリオナだが、突如として、普段の凛とした真面目な科学者の顔になった。


「私の印を奪ってください。」

「はっ?」


 意味が分からないエレナだが、リオナは唇を指差した。


「それは―。」

「接吻です。言わなければ分かりませんか?」

「その―。」


 エレナは後退りしようとして、自分の身体が半露天風呂の湯船の淵に衝突した。


「或いは、私からしましょうか?その後で、貴方もしてください。そうしなければ、私は信用出来ません。」

「-。」

「エレナ。私はふざけてこんな事を言っているのではありません。貴方を愛しているから言っているのです。でなければ、一緒にこうしてお風呂に入る事もしません。」

「-。」


 一瞬、AILの紅いカメラ・アイが脳裏を過った。

 AILならば、全力で止めに来るだろう。

 だが。


「自分は人間です。人間だからこそ、リオナさんが好きなのです。」


 と、言いながら、リオナと唇を合わせた。

 離れると、リオナの方からも合わせて来た。

 そして、離すと後味を確かめるような仕草をする。


「貴方は人間ですね。」


 と、リオナは微笑むと、エレナに自分の身体を絡めるのだった。



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