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時計仕掛けの転移恋歌  作者: Kanra
第五章 思いの積み重ね
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第41話 こいぬ座神話

「こいぬ座神話でしょうか?」


 と、AILが言う。


「ギリシアのデーバイを興したカドモス王の孫アクタイオンは、50匹の猟犬を連れて仲間と共にキタイロン山で鹿狩りをし、一定の成果があがって休憩しようとしたが、そこは女神アルテミスの聖地であるガルガピエの谷で、谷の奥の泉で女神は、お付きのニンフたちと共に水浴びをしていた。その洞窟へ、アクタイオンは知らずに迷い込んでしまい、全裸の女神アルテミスを見てしまった。怒ったアルテミスは「裸のアルテミスを見たと言いふらせ!もし、言えるものならば!」と言い放つ。逃げ出したアクタイオンはアルテミスによって鹿に変えられてしまった。途方に暮れながら森を彷徨うと、自分の50匹の猟犬に見つけられ、噛みつかれ、八つ裂きにされ、殺されてしまった。50匹の猟犬は立派な鹿を仕留めたと、主人であるアクタイオンを探すも、どこにもいない。なぜなら、犬が殺した鹿こそが、アクタイオンだったのだ。これを哀れに思ったゼウスは、犬の一匹を天に上げ、こいぬ座にした。」

「-。まぁ、そんなところか。」


 エレナは言いながら、一歩ずつ下がろうとして、また誰かにぶつかった。

 霧積そらだった。

 霧積そらは、エレナの両肩を抱える。


「なら、鹿に変えてしまって、私が鹿肉にして食べてしまってもいい?リオナ。」


 と、そらが言うと、服を着たリオナが風呂場から出て来た。

 怯えるエレナを見たリオナは、「さてどうしてくれよう」と見下すような目をしていた。


「もっ申し訳ございません。」


 震えながら、エレナは謝罪する。


「なぜ、鍵をかけないのです。鍵をかけなければ、第三者が入って来る可能性だってあります。アルテミスがアクタイオンを鹿に変えたのだって。第三者が入らないようにしなかった、アルテミスに過失があります。第三者が入れないように最初からしておけば、アクタイオンが迷い込んで来る事も無かったのですから。」

「-。」


 リオナは今のAILの言葉に、火に油を注がれる格好になった。

 だが、その怒りの矛先は、AILではなく、エレナに向けられる。


「エレナ。プロメテウスをご存知で?」


 先に答えるのはやはり、AILだ。


「ゼウスの予言を無視して人間に火を与えた事で、人間は火を基盤とした文明や技術などの多くの恩恵を受けたが、同時にその火を使って武器を作り、戦争を始めた。怒ったゼウスは、プロメテウスを山の頂に磔にし、脇腹を毎日テュポンとエキドナの子である大鷲達につつかれ喰われる拷問にかけられた―。エレナを拷問に掛けようと言うのですか!?」

「そうね。アイルが余計な事を言わなければこうはしなかった。そら。裸を見られても大丈夫?」

「この世界では女性が上で、男子は下よ。むしろ、男が裸を見られると逃げ出すよね!」

「よろしい。なら、風呂場へエレナを運び込んで。脇腹をつつき回して、湯船に沈めてしまいましょう。」


 リオナはニヤリと笑いながら言った。

 拷問されている間、AILは自分の無力さを感じていた。

 風呂の中から聞こえる、エレナの悲鳴や嬌声を前に、AILは何も出来ず、むしろ、自分の発言が、エレナを拷問にかけてしまう結果になったからだ。


 ようやく解放されたエレナに、


「私の存在意義はなんなのでしょう。」


 と、問いかけるも、エレナは首を横に振るだけだった。

 だが、リオナは「ふふふっ」と満足気に笑っていた。


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