第39話 リオナの裏の顔
長身にして、容姿端麗。
眼鏡を掛けたその姿はまさに科学者。
リオナという女性を言い表すと、このようになるだろう。
だが、今夜。
そらと言う女性が、酒を持ち込んでいた。
筑波吟醸と銘打った日本酒を、筑波山観測所近くの名物「カリントウ饅頭」を肴にしながら飲んでいる。
今日の夕食も、筑波山観測所近くの名物「筑波うどん」だったのだが。
22歳のリオナは良いが、18歳のエレナは酒が飲めず、日本茶を嗜んで付き合っていたが、付いて行けなくなり、自室に、AILと共に籠ってしまった。
「この世界に来て相当な月日が経過しましたね。」
と、AILが言う。
「ああ。」
「エレナ。少々気になる事があります。」
「なんだ?」
「事実を伝える事に、何か問題が生まれる理由が分かりません。信じようと信じまいと自由ですが、私は事実を捻じ曲げて伝える事無く、事実を正確に伝えるようプログラムされているのです。何か問題があると言うのも事実として正確に伝えなければ、対処できません。」
「-。俺としても分からぬ。だが、このところ、言っていいのか悪いのかと考えてから、事実を伝える事が増えたように感じる。」
「エレナ。私は事実を伝える義務があります。リオナさんが、エレナを思うと、息が詰まると言う症状があるそうです。」
「ふーむ。それだけで、リオナさんが何ら病気を疾患しているとは断定できないな。」
「はい。息が詰まると言う症状の具体的な原因としては、肺疾患、心疾患、血液疾患、そして、精神的なストレスなど、様々なものが考えられ、対処法も異なります。」
「リオナさんを、詳しく診察したいと?」
「はい。」
「-。」
「エレナ?」
「-。」
「どうしました?」
「いや、一瞬、リオナさんの事を考えた。そしたら、こっちも、息が詰まった。」
「しっかり顔を見せてください。いや、突発的な物でしたら、救急外来を―。」
その時、エレナの部屋の襖が「スパァン!」と音を立てて、勢い良く開き、エレナは驚いた。
「心拍数が上昇しました。何が?」
AILが言うのを尻目に、エレナは振り向くと、そこには普段は見せない砕けた表情を浮かべたリオナの姿があった。見ると、顔が僅かに赤い。
「エレナが居なくなってしまって寂しいから、こちらに来てしまいましたぁ。」
リオナは千鳥足でエレナに歩み寄る。
「酩酊、歩行障害、リオナさん。貴女は軽度の急性アルコール中毒の可能性があります。一体、どれだけ飲んだのですか。」
AILが言う。
「えぇへへ。」
リオナはまるで呂律が回っていない。
「エレナァー」とエレナを呼びながら、エレナの身体に抱き着くようにして、そのまま眠り込んでしまった。巻き添えで、エレナも身動きが取れなくなった。
「仕方ありません。このまま、リオナさんは寝かせておきましょう。特に、問題となる事はないでしょう。リオナさんの息が詰まると言う症状は、アルコール依存症による物と考えましょう。」
と、AILが言うが、確かに酒を飲むリオナだが、アルコール依存症に至る程の酒好きと、エレナは考えられなかった。
「風呂にも入れない。」
「明日の朝に入りましょう。いつもの時間に、アラームを鳴らします。」
「AIL。通常スリープへ移行セヨ。」
エレナの音声操作で、AILはスリープ体制になり、エレナもやむを得ず、リオナを抱いたまま寝た。
リオナを抱いたせいか、エレナは息が詰まる症状が強くなり、身体も重く感じた。




