第37話 リオナとエレナ
夜が明けると、リオナとエレナは、実験自動車「ルナ」で住まいであり、職場でもある、巴波川の畔の庄屋に向かう。
その際、ルナに搭載されているAIL10000型コンピューターの充電を行う。
走行中、発電用車輪を降ろし、車輪の回転で発電機を回して得た電力を蓄電池に溜める。本来、エンジンで発電機を回すのだが、この世界にやって来た際に内燃発電機が破壊され、非常発電機である発電用車輪で発電しなければならない。
電力を喪失すれば、AILは機能停止に陥る。
エレナは「ルナ」に搭載されている自動運転システムの復旧に成功したのだが、やはり電力不足で機能しなかった。
リオナもまた、「ルナ」のAILの中にあるメモリーデータバンクを探ろうと考えていた。そして、庄屋に着き、エレナが先に「ルナ」を降りた時、「ルナ」のAILがリオナを呼び止めた。
「リオナさん。私のメモリーデータバンクを調べるのならば、昼時にまた来てください。後方のモニターを用いて、前の世界で起きた事件を説明します。」
「事件?」
「はい。」
「エレナは「ルナ」の実験中にアイルが事前にプログラムして、この世界にやって来たと聞いてますが。」
「なぜプログラムしたのか、それを教えます。」
リオナは午前中の仕事を終えると、エレナが昼食に向かった隙に、再度、「ルナ」のAILに向き合う。
AILはモニターを用いて、エレナの元居た世界で何が起きたかを説明する。
ミサの暴挙に始まるエレナへの攻撃が、AILに波及。そして、自らとエレナを守るために、この世界へ転移させたのだ。だが、エレナは元の世界へ帰る方法を探ろうとしている。
「リオナさん。貴女はエレナを元の世界へ戻すべきと考えますか?」
と、AIL。
リオナは少し考えた。
「考え物ですね。しかし、私はエレナを思うと、心が重くなることがあるのです。」
「-。」
「この感情はなんなのでしょう。」
AILは何も言えなかった。
午後、エレナと合流したリオナは、庄屋にやって来た客人を見て「わっ!」と笑顔を浮かべた。
「そら!来てくれたんだ!」
「昼過ぎの汽車で筑波山からね。ほら!」
そらと呼ばれた女性は、リオナに一升瓶を見せた。
その瞬間、ホコネとウララが真っ青になり、エレナに、
「今夜は蔵に入ってて。」
と、言い始めた。
「なぜ?」
「リオナとそらが呑むと、大変な事になるのよ。」
ホコネが耳打ち。
「ところで、リオナの新しい助手さんは?」
そらはキョロキョロと、庄屋を見回す。
「あっあぁエレナね。今、蔵じゃないかなぁ。アハハハハ。」
ホコネがしどろもどろに答えながら、ウララが蔵へとエレナを押しやる。
だが、その時、エレナはAILの端末を置き忘れてしまった。
リオナはそれを拾い上げた。




