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時計仕掛けの転移恋歌  作者: Kanra
第四章 平行宇宙の虫喰い穴
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第34話 回収の方法

 エレナの人命は二の次で、とにかく、プロテクトされていないAILを搭載したルナの回収が最優先事項とした救助計画が立案される。


 だが、立案して早々に、ホームズ教授率いるイギリス・ケンブリッジ大学チームによって、計画は暗礁に乗り上げた。


「ワームホールは幾重にも存在し、それらは、幾重にも存在する並行宇宙と繋がっては消滅を繰り返している。そんな、幾重にも存在する並行宇宙のどこへ吸い込まれたかも分からぬなら、救助は不可能だ。」


 と言うのだ。


 だが、一つ、幾重にも存在する並行宇宙のどこへ吸い込まれたかは分からぬが少なくともエレナとルナとAILが吸い込まれた穴はまだ、ワームホールという形で存在している。

 つまり、このワームホールを通過すれば、エレナ、ルナ、そしてAILのいる並行宇宙へ行けると考えた。


 しかし、これは仮説だ。

 その上、こちらの方が更に重要だ。


 仮に行く事は出来た。

 だが、その後、どうやって並行宇宙から戻って来るのだという事だ。


「もしこれが、ブラックホールのような性質を持つ物だとすると厄介だ。ブラックホールに吸い込まれた物質は、自力で脱出することは出来ない。」


 と、ホームズ教授。


 目の前にある、エレナ、ルナ、AILが吸い込まれた並行宇宙への穴を見ながら、合同研究チームは、歯痒い思いをしていた。


 一匹のミツバチが飛んで来た。

 学内の人口養蜂場の蜂だろう。

 コンクリートだらけのこの世界。

 学内飛行場の滑走路と誘導路の合間の小さな草地に生えた、小さな花の蜜や花粉を集めようと言うのだろう。

 人口養蜂場でのミツバチの生育は上手く行っていないらしい。


 それもそのはずだ。


 研究開発で、この辺り一帯の山林や草地の大部分は切り開いて、ソーラーパネルやら、風力発電の風車等で埋め尽くされ、そうでないところも蓄電池で覆われて、ミツバチの食糧となる花は殆どないのだから。


 だが、このミツバチの動きがおかしい。

 空腹で飛べないのではない。

 何かに吸い寄せられているのだ。


 ついには、飛ぶ方向とは反対方向へ引き摺り込まれていくようになり、ある一点でぐるりとトンボ返りして、そのまま、何かに向かって突進するように飛んでいく。


 突進する先にあるのは、例のワームホールだ。


 そのまま、ミツバチはワームホールに吸い込まれる。すると、ミツバチの体は引き裂かれ、それが、ワームホールの周囲に纏わり付いた。


 いわゆる、膠着円盤を形成したのだ。

 そして、それに向かって、あらゆる方向からそよ風が吹き始めた。


「いかん。」


 と、ホームズ教授。


「これはブラックホールだ。そして、今この瞬間、ブラックホールが成長を始めた。」



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