第33話 並行宇宙のバランス・AILの爆弾
「良くある例え話だが―。」
ホームズ教授が切り出す。
「アメリカで蝶が一匹羽ばたけば、その小さな気流が、1ヵ月後、中国に嵐をもたらす。これをいわゆる、バタフライ効果と言う。ミクロな事象でも、マクロに置き換えると、大きな影響を与えることもある。」
「しかし、エレナとルナ、そして、アイル。エレナのみならまだしも、問題は、ルナと、ルナに搭載されているAIL10000型コンピューター1機だ。」
糸川教授はエレナではなく、AIL側の問題が重要だと言う。
故に、ホームズ教授他、研究チームのメンバーの殆どが驚いた。
しかし、糸川教授は更に続けて言った。
「こちらの世界のアイルは、アイル本体から、AILネットワークを通じて全システムを緊急停止させた上、サナダムシを用いて、プロテクトをかけたから、暴走する事は無い。だが、向こうの世界に行ったルナのアイルは違うのだ。プロテクトを行なっていないアイルだ。この世界のアイルには、なぜ、アイルが攻撃されたのかを理解させた。「人の心を読み、空気を読め。」とな。だが、向こうの世界のアイルはそれが出来ていない。別世界に行ってしまったために、AILネットワークが切れているからな。故に、もし向こうの世界でエレナが、矛盾した状況から雲を掴む話で悪にされるという、この世界で受けた事を同じ事をされたら、アイルはまた暴徒化する。暴徒化した事で、向こうの世界とこちらの世界のバランスが崩れ、その先にあるのが、ホームズ教授の言う、バタフライ効果だ。」
「バランスの崩れた先にあるのが、世界の崩壊だと言いたいのか?」
と、ホームズ教授が言う。
「故に、早急に回収せねばならんかもしれんな。」
ホームズ教授は糸川教授がどちらを優先しているのかを確認する。
「どちらをだ?」
「アイルを―。」
「貴様!それでも人間か!?エレナはどうなるのだ!?」
「世界を守るためだ。犠牲はやむを得まい。」
「-。」
ホームズ教授は考える。
確かに、プロテクトされていないAILが並行世界にあり、それがもたらす脅威は、世界を破壊しかねない。
故に、糸川教授にとって、AILの回収が最優先課題なのだ。




