第32話 滑走路の穴
糸川教授他、研究チームに物理学者ホームズ教授率いるチームも合流した。
まず、滑走路に開いたと言う穴の現状調査を行うため、滑走路に向かう。
それは、ほんの小さなゴルフボール程度の大きさの穴だった。
それが、滑走路上に開いているように見える。
しかし、LEDペンライトで穴の中を照らしてみるが、何も見えない。底が見えない程に深いのだろうか。
「虚数空間。という奴か。」
糸川教授が言う。
「ああ。問題はこれがどういった性質を持っているかだが―。」
「ホームズ教授。「ルナ」はどこへ行ったと思われるか?」
「まずこの宇宙の過去では無いだろう。この宇宙の過去に行けば、どのような形で逃げおおせようにも確実に歴史に触れてしまう。簡単に言えば、ビルや家屋の柱のようなものだ。我々が居る時間をビルの最上階とし、「ルナ」がその下の階。つまり過去へ行き、そこでビルの柱。これを時間軸とするなら、その時間軸に触れた時点で、時間軸と言うビルの柱が折れる。折れた時点で、連鎖的に折られた階より上の階は一気に崩れ落ちる。当然、我々が居る最上階もな。」
「では、過去ではないと考えられると。」
「そうだよ糸川教授。行ったのは、異なる宇宙に存在するとされる、並行世界。つまり、異世界だ。しかし、この虚数空間もまた、厄介者だな。」
ホームズ教授は苦虫を嚙み潰したように言う。
「その性質が分からぬ以上、我々がどう対処すればよいかも分からん。それによっては、覚悟しなければならん。」
「何を?」
「「ルナ」とエレナの救助のため、我々も、並行世界。つまり異世界へ行かねばならなくなるかもしれん。いや、異世界を蝕んだなら、その修復もせなければ、ならない。」
「なぜ?」
「並行世界が仮に、シーソーのようなバランスを保って、我々の宇宙と並んで存在していたなら、ルナのアイルとエレナの存在がそのバランスを崩し、それが、我々の宇宙と並行して存在する宇宙、どちらも破壊しかねないからだよ。」




