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時計仕掛けの転移恋歌  作者: Kanra
第三章 ここは異世界
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第29話 駅

 庄屋の隣を流れる巴波川の瀬戸ヶ原堰に作る水力発電所の資材を乗せた列車が最寄り駅に来る時間になった。

 その資材運搬に出かけるのだが、エレナはリオナの車を運転することが出来なかった。

 

 エレナの車は実験自動車「ルナ」だが、ルナはATなのに対し、リオナの車はマニュアルトランスミッションだったのだ。

 エレナの居た世界にも当然車はあったが、マニュアルトランスミッションの車は既に時代遅れとなり、教習所で普通自動車運転免許を取得する際は自動的にAT限定免許となる上、最近ではマニュアルトランスミッションの免許の教習すら行われていない教習所の方が多い。

 エレナは一応、マニュアル車の免許は持っているが、運転は殆どした事がない。

 しかし、この世界には未だマニュアルトランスミッションが多く、AT車は極少数なのだ。

 

 そのため、結局はリオナの軽バンで行くことになり、運転はリオナが行い、エレナは駅で資材の取り卸しを行うことになった。


 駅のホームは1~5番線までありその他、貨車が止まっている数本の側線が見え、端の方には列車の車庫が見える。

 2番線ホームに資材を載せた貨物列車が来たが、列車にもエレナは驚いてしまった。


 黒い車体の蒸気機関車が牽引していたのだ。

 機関車の後に荷物車が2両、そして、後ろには客車が3両の各駅停車。


 この駅で、後ろから来る急行列車に道を譲るため長い時間停車する。


 その間に、荷物車の荷物の積み降ろしをする。

 資材を荷物車から降ろし、駅舎で借りて来た台車に乗せ、構内踏切を渡っていると、遠くから急行列車がやって来るのが見えた。


「急行「大樹ふたら」日光・鬼怒川温泉行き。」


 と、放送しているのが聞こえた。


「あまり周りをキョロキョロしていて、荷物を落とさないでよ。」


 リオナに言われる。


「駅で列車を見たいなら、お休みの日にね。」

「-。」

「或いは、列車も違うと言うの?」

「ええ。蒸気機関車なんて、見たこと無いです。」


 エレナの世界でも一応、観光運転として蒸気機関車も走っているらしいが、滅多に見ない。そもそも、機関車が引っ張る列車などほとんど存在していない。

 

 車に資材を積むと、エレナが台車を駅に返してまた庄屋に戻る。


 戻りながらAILは、エレナを通じて見た駅の情報を読み込む。


「充電が切れそうだ。」


 と、AILが言う。


「タイプCの充電コードはあるから、端末のアイルの充電は出来るし、昨夜も充電しながら寝ていたが―。」


「違う。ルナの方だ。ルナの方の充電が切れると、この端末の情報が止まる。」


 ルナに搭載されているAILは、ルナのエンジンの内燃発電機、及び、非常発電機で発電した電力が蓄電池に蓄えられ、それを元に稼働している。


 しかし、この世界に来た際、内燃発電機が壊れて発電が出来ず、非常発電機で発電したのだが、非常発電機を使用しての走行距離が短く、蓄電池に電力が蓄えられなかったのだ。


「リオナさん。夜、大平山天文台?に行くと言う事でしたよね?」


 と、エレナ。


「ええ。行きますよ。」

「あの、大平山天文台までは、自分の―。「ルナ」に乗っていきませんか?」

「-。今の会話と何か関係が?」

「はい。アイルの電力を確保するためです。」

「どういう仕組みか、後で教えてね。」

「-。それは―。」

「交換条件よ。」


 と、リオナは言った。


「では、ルナで行くということで―。」

「何度も言わせないで。」


 リオナは「ふん!」と鼻を鳴らして言った。


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