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時計仕掛けの転移恋歌  作者: Kanra
第三章 ここは異世界
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第21話 庄屋の前

 小柄な少女は、青を基調として差し色にオレンジと白が取り入れられたワンピースシャツを着ていた。

 和服ではない。


「お客さん?それにしては変ね。」


 と、少女は言う。


 ガラガラと、庄屋の中の扉が開き、中から少女よりも一回りほど背丈の高い女性が出て来た。姉だろうか?


「ウララちゃん?もうお客さん来ているの?」


 どうやら、少女の名前はウララと言うらしい。

 押し黙っているエレナは、どのように対応すればいいかを考える。

 それよりも先に、また別の人が現れた。

 幸来橋の対岸から、小さな車がやって来て、ルナの後ろに停まる。


「あら、天文台のリオナだわ。」


 と、ウララが言う。


「おはようございます。ちょっと込み入った事がありました。大平山天文台で彗星観測をしていたところ、隕石落下を観測したまではいいですが、奇妙な地震も観測しました。それで、仕事前に、ここの百葉箱の観測記録と、地震計の観測記録を―。」


 長身でスタイルも良い大人の見た目と言うべき容姿。えんじ色と黄色を基調としたビジネススーツのような服に眼鏡を身に纏う出で立ちから、この庄屋のかなり上の立場の人であろうか?


 エレナはまだ押し黙っていた。


「ところで、こちらの方は?」


 天文台のリオナと呼ばれていた女性の眼にも、明らかに異質な存在であるエレナの姿が入らないはずもない。


「えっと―。」


 ようやく、エレナはかすれた声を出した。


「ふーむ。」


 リオナはエレナをじっくり見回し、更にルナを見回す。


「この世界の人では無さそうね。」


 リオナは、ばっさりと言った。


「戸惑っている様子ね。では、今は何年何日?」

「-。西暦203X年3月15日。」


 尋問を受けているように、エレナは答える。機械音声のような無機質な話し方だが、僅かに震えていた。


「今日は確かに西暦203X年3月15日ね。では、これを見た事はある?」


 リオナは車の中からカセットテープを出して見せる。

 車のオーディオの中に入っていた物だ。

 エレナの居る世界にカセットテープは無い。

 エレナは首を横に振った。


「ではこれは?」


 今度は、8㎜ビデオテープとビデオカメラを見せるが、エレナはまた首を横に振った。


「では、貴方の車?の中を拝見させてもらってもいい?」


 それに、エレナが頷くよりも先に、リオナは先走って、ルナの中を覗き込み始めた。

 リオナは見たことも無い装備品に目を奪われる。

 そして、AILのカメラ・アイに指先を触れてみた。


「不審に思われる事、そして、興味を持たれる事、その気持ちは分かりますが、あまり戯れないでください。そして、エレナは、状況が分からないのです。」


 と、AILがいきなり機械音声を出したのだから、リオナは仰天し、ウララは恐怖で「ホコネ!」と、姉と思われる女性に抱き着いてしまった。


「驚かせてしまって申し訳ございません。私は、AIL10000型コンピューター。通称「アイル」です。この車両は、AIL搭載型自立航行実験自動車「ルナ」です。そして、ドライバーは横川エレナと申します。私達は、実験走行中、ワームホールに飛び込み、元居た世界からこちらの世界に突入したのですが、現在、この世界の情報が著しく不足しており、情報を収集中です。」


 戸惑うエレナに変わって、AILがリオナに状況を説明する。


 だが、エレナは更に戸惑った。


 なぜなら、そもそもAILはここが並行世界であるかどうか分からない様子だったのに、今のAILの説明では、「故意に」ワームホールに飛び込んで、並行世界に飛び込んだとも取れるからだ。


 もし、そうならば、AILの中に最初から、ワームホールに飛び込むようプログラムされていたことになる。


「何を言っている?最初からプログラムしていたのか?」


 エレナがAILに問いかける。


「あの世界で突如、我々に対し周囲の者が攻撃して来たため、避難の要ありと判断し、物理学で存在が証明されている並行世界へ飛び込んだのです。ここは並行世界です。しかし、私も、この世界の情報が不足しております。」


 エレナは呆れ返った。



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