第19話 天文台のリオナ
大平山天文台。
軽井沢リオナは夜明け前の東の空に向け、望遠鏡のカメラを向けていた。
アンドロメダ星雲が銀河である事を発見したリオナは、続いて、筑波山観測所と、オーストラリア・シドニー天文台と合同で発見し、現在も観測しているレルグス彗星を追っていた。
リオナの本職は科学者では無いし、住まいもここでは無いのだが、科学に感心深いリオナは、時々、大平山天文台にやって来て、天文観測をしている事がある。
そして、今、追っているレルグス彗星は、リオナと筑波山天文台、シドニー天文台の観測の結果、近日点を通過した際、彗星核が分裂し、分裂した破片の一部が、地球の方向へ飛んでくると予想されていた。最も、それがぶつかる可能性は極めて低いのだが、それでも、何もないか監視する必要があり、世界中の天文台で、監視が続いていた。
今、リオナがカメラを東の空に向け撮影していた時、東に見える筑波山の方から、閃光が見えると、大平山方向へ飛んできて消えた。そして、大きな衝撃音と地鳴りが轟いた。
「大平山天文台より、筑波山地震観測所、及び筑波山天文台取れますか!」
リオナが筑波山に連絡を取る。
「こちら筑波山観測所。」
「大平山天文台。東の空から隕石落下!隕石は空中で消滅するも、衝撃音と地震、及び地鳴りあり!」
「筑波山観測所でも、西に向かって落ちる火球を確認するも、カメラ画角外。しかし、地震の観測は無い。」
「了解。こちらは、地震計の記録と撮影したフィルムを東京麻布天文台及び、筑波山観測所に送ります。」
リオナは地震観測計のデータを照らし合わせる。
やはり、震度1~2程度の地震を観測している。
隕石落下を撮影したビデオを2つダビングして、自分の車で町に降りる。
町には、リオナの本来の職場と住まいがある。
その職場にも急な用事が出来た。
住み込みの職場にある地震観測計と、百葉箱の観測機器のデータだ。
天文台を出て、山を降りる。
大平山神社の鳥居に来た時、その近くの空間に異変があるのに気付いた。
最初は何が変なのか分からなかった。
だが、よくよく見ると、何が変なのか分かった。
空間が僅かに歪んでいたのだ。
リオナはフィルムカメラでそれを撮影して、一応記録する。
車で町へ降りて行き、本来の職場である白百合家の商家に入ると、そこに見慣れる車両と、見慣れぬ人物がいた。
白百合家の次女、ウララがリオナに気付いた。
「随分慌ただしくお戻りね。天文台のリオナ。」
長女のホコネも微笑む。
「ちょっと、急な用事が。ところで、そちらの方は?」
と、リオナは見慣れる人を差した。