プロローグ
今、ある研究が行われていた。
それは、AI。人工知能を搭載したコンピューターによる人の育成。つまり、親の立場を人工知能が担い、コンピューターによる子育てが可能かと言う研究である。
事の発端は、202X年に打ち上げられた、第2国際宇宙ステーションに搭載された大型コンピューターによるシミュレーションの結果だ。
現状のまま少子化が進めば、日本は100年以内に無人島と化してしまうと言う驚異的なシミュレーション結果が出たのだ。
現日本政府は、移民ばかりに頼る政策を推し進め、日本人による子育てが難しくなり、仮にこのまま行けば、今度は純血の日本人が消滅すると言う結果も出る状況。
そこで、南條大学教授の糸川英樹は政府の政策ではなく、コンピューターによる日本人の育成を試みる研究を始めたのだ。
そして、その第1号となったのが、エレナと名付けられた男。
幼少期に、不法滞在者の外国人に両親を殺され、赤子の頃から、孤児となったエレナは、孤児院から大学の研究施設に移り、人工知能を搭載したコンピューター「AIL10000」通称、AILと、糸川教授率いる研究チームにより育てられ、今、高校3年。18歳となった。
18歳になったエレナは、それなりに、人として成長していた。
そして、AILによる子育ても十分に行えるという事も分かって来た。
糸川教授率いる研究チームは、量産型AIL10000を搭載した人型介護ロボットや接客ロボット、更には自動運転バスやタクシー、自動車の開発に着手。
近代テクノロジーの象徴として、AILは日本を支える新たな基盤となろうとしていた。
そして、後継機であるSSPOの開発も進めば、AILと共に、ありとあらゆる物を支えるであろう。
そう、期待されていた。